録音自体が奇跡の様な盤の一枚
ブルーノート・レーベルには、他のレーベルにはなかなか見られない「その録音自体が奇跡の様な盤」が存在する。リーダーのジャズメンとプロデューサーのアルフレッド・ライオンの、先取性のある感性と自由な発想の音作りがそうさせるのだろうが、この時代にこんな盤がリリースされているのか、と思いっきり感心する盤が多く存在するのは、ブルーノートの特質の一つだろう。
例えば、このアルバムなど、何度聴いても、この時代にこんな盤がリリースされているのか、と思いっきり感心する。そのアルバムとは、Kenny Dorham『Afro-Cuban』(写真左)。ブルーノートの1535番。二種類のセッションから構成される。
一つは、1955年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Hank Mobley (ts), Cecil Payne (bs), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。ここでの演奏は、LPでのB面を占める、B1: K.D.'s Motion、B2: The Villa、B3: Venita's Dance の3曲。
もう一つのセッションは、1955年3月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), J.J. Johnson (tb), Hank Mobley (ts), Cecil Payne (bs), Horace Silver (p), Oscar Pettiford (b), Art Blakey (ds), Carlos "Patato" Valdes (cong), Richie Goldberg (cowbell)。ここでの演奏は、LPでのA面を占める、A1: Afrodisia、A2: Lotus Flower、A3: Minor's Holiday、A4: Basheer's Dream。
このアルバムの「この時代にこんな盤がリリースされているのか」という部分は、LPでのA面を占める1955年3月29日の録音の部分である。1955年の録音にして、ノリノリのアフロ・キューバン・ジャズが展開されているのだ。初めて聴いた時、いや〜、これには驚いた。決して俗っぽくなく、しっかりと硬派にハードバップに演奏されるアフロ・キューバン・ジャズ。
ドーハム、J.J.ジョンソン、ハンク・モブレイ、セシル・ペインの4管編成8重奏団の演奏。ペインのバリサクが効いていて、ダイナミックなアンサンブルが魅力。1955年初頭の時期、ハードバップ初期の時代にこの「ラテンアレンジ」は凄い。ラテン・ジャズの初期の名演がここに記録されています。演奏は荒削りですが、熱気溢れる演奏でねじ伏せる様に、ミス・トーンやフレーズの揺らぎは全く気にしない。
加えて、LPでのB面を占める1955年1月30日の録音の部分は、上質なハードバップ。これも、1955年初頭の時期、ハードバップ初期の時代に、これだけレベルの高いハードバップな演奏が展開されているとはビックリです。さすが、リハーサルをしっかり積んだ演奏かして、ユニゾン&ハーモニーもばっちり合った、質の高いハードバップが展開されています。
そして、どちらの種類の演奏も、ケニー・ドーハムのトランペットが素晴らしい。速いパッセージにもぶれない、テクニックに優れた、歌心満点のドーハムの演奏には目を見張ります。「動」のドーハムの最高な演奏がこのアルバム全編に渡って記録されています。このアルバムのドーハムを聴けば、ドーハムのトランペッターとしての実力の高さを再認識出来ると思います。
とにかく、ブルーノート・レーベルによくある「その録音自体が奇跡の様な盤」の一枚です。アルバム・ジャケットのデザインも、1955年当時としては、かなり「尖って」いて、このジャケットのデザインにも注目です。さすがブルーノートと思わせる傑作の一枚です。
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