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2014年11月 3日 (月曜日)

山中の『ブラヴォーグ』の真価

振り返ってみると、山中千尋のアルバムはデビュー盤から全て聴いている。つまりは彼女のピアノが心の吟線に響くんだろう。とにかく聴いていて楽しいし、心地が良い。このブログでも少しづつ、山中千尋のアルバムをご紹介している。今日は第8作目の『bravouge(ブラヴォーグ)』をご紹介したいと思う。
  
さて、改めて、第8作目『ブラヴォーグ』である。アルバム・タイトル『bravouge(ブラヴォーグ)』は、 楽典用語の「ブラブーラ」:1)高度な技巧を必要とする華麗な曲、2)勇壮・華美、華やかな演奏(演技の) 威勢のよさ、と「vouge(スタイル、形式、ファッション)」とを合わせた造語だそう。ふ〜ん、そうなんや。
 
タイトルの造語説明を聞いた時は、ふ〜んという感じなんだが、アルバムを聞き始めてみると、このアルバム・ タイトルの造語そのものの音が展開されていることに気が付いて、唖然とすることとなる。

冒頭の「アクエリアン・メロディ」の前奏の「カンカンカンカン」と叩き付けるような、ピアノのシングルキーの音。この単音に感じるテンションの高さにちょっと「おののく」。これって、ガーンゴーンとキーを叩き付けるように弾き倒す、男勝りのピアノ展開か〜、と身構えるが、そのテンション溢れる前奏に代わって出てくるテーマの旋律が、清々しくて爽やかな風のようなメロディーなので「ホッ」とする。
 
いかにも山中千尋らしい流れるような旋律。音の選び方に確固たる個性を感じる。ザッザッザッと重ねる和音の使い方は山中千尋そのもの。それでも、右手の旋律はテンション高く、テクニック溢れ、覚悟を感じる、凛とした旋律。ピアノのスケールを目一杯使った演奏はなんとなく鬼気迫るものがあります。
 
このテンションが続いたら、ちょっと辛いかな〜、と思いつつ、次の「カリヨン」へ。これも山中千尋らしい楽曲。前奏からテーマは優しい音、優しい響き。それでいてキーはしっかり底まで叩かれいて、テンションはしっかりと張っている。展開部に入ると、これまたテクニックに優れたインプロビゼーションが続く。山中千尋は巧くなったと思う。彼女の演奏家としての矜持を感じる、良い演奏です。
 
3曲目は「タイム・フォー・ラヴ」は「待ってました」って感じ。ピアノでは無い、オルガンの前奏に思わずニヤリとする。テーマを弾くフェンダーローズ(だと思う)の音が実に良い。山中千尋はキーボードの扱いが上手くなってきた。自分なりに良く研究して、山中千尋のキーボードらしい個性を引き出すことが出来るようになってきたと感じる。雰囲気のあるオルガンとフェンダーローズの響きが魅力的な逸品でしょう。
 
4曲目の「ユニ」、5曲目の「ヴォウ・デイタール・イ・ホラール」は山中千尋節が満載の手慣れた楽曲と演奏が続く。この2曲を続けて聴いていて、ここにきて、山中千尋のピアノの個性は確立された感を強く感じた。過去のジャズ・ピアニストの成果、個性をしっかりと踏まえた中で、山中千尋個人の感性を添加して、インプロビゼーションの部分で、明らかに山中千尋と判る個性を獲得している。
 
 
Chihiro_bravogue
 
  
6曲目の「ブラヴォーグ」にはアルバム全編を覆う「ミュージシャンとしての矜持」をより強く感じる。 いや〜なんて複雑な曲なんだろうか。ドラムもベースもテンション高く、山中千尋のピアノの後に続き、山中千尋のピアノを盛り立てる。
  
7曲目は「ドイス・プラ・ラ、ドイス・プラ・カ」。ボサノバの名曲。ちょっと俗っぽくて猥雑で、それでいてウェットにはならない不思議な曲を、山中千尋は意外と冷静に淡々と紡ぎ上げていく。ファンキー・ジャズの様に決して俗っぽくならず、オーバーアクションにもならない。このクールさがまた彼女の個性になっていくんだろう。何も熱くなってガンガン叩くだけがジャズでは無い。
 
8曲目「サークル」は複雑な曲ではあるが、演奏全体の雰囲気はハッピー・スイングで、ノリの良いブルースである。ここでの山中千尋はこれまた上手いんだなあ。なんだかオスカー・ピーターソンが乗り移ったようだ。それでも早弾きの時、ほんのホントにほんの少しだけ遅れ気味になる、というか、後ろに引くという感じがなんとも癖になる。楽しい演奏だ。
 
9曲目の「ル・フリュイ・デファンドゥ」はこれまでの演奏のテンションをクールダウンするような、美しい響きを持った演奏である。丸い優しさと柔らかさが同居した、女性ピアニストならではの表現である。この丸い優しさと柔らかさが同居したような表現は男性にはなかなか出来ない。
 
ピアノには打楽器の側面と旋律楽器の側面があるが、打楽器の側面については、力だけでは男性ピアニストに絶対に負ける。その打楽器の部分を女性ピアニストとして、どうやって折り合いをつけていったらいいか、山中千尋は彼女なりのその答えを見い出しているようだ。
 
この『ブラヴォーグ』ってアルバム、とてもストイックな、内容の濃いアルバムです。でも、ちょっとクスッと笑ってしまうようなユーモアも彼女は兼ね備えている。10曲目のコミカルな「スタッカート」という曲ですが、 この短いコミカルな演奏は「本当はここでアルバムは終わり」って、僕には聴こえる。次の曲があからさまな ジャズ・スタンダードの大人気曲の「星に願いを」ですからね〜。
 
この「星に願いを」は、ボーナス・トラックだと思って聴いています。『ブラヴォーグ』というアルバムには必要な演奏では無いですからね。『ブラヴォーグ』の真価は、1曲目の「アクエリアン・メロディ」から、 9曲目の「ル・フリュイ・デファンドゥ」まで。この9曲で、十分に山中千尋ワールドが堪能できます。
 
 
 

震災から3年7ヶ月。決して忘れない。まだ3年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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