ハードバップの夜明けである。
『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の Vol. 1と Vol. 2(写真)。ブルーノートの1521番と1522番。パーソネルは、Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curly Russell (b), Art Blakey (ds)。1954年2月、ジャズクラブ、バードランドでのライブ録音。
Pee Wee Marquette(ピー・ウィー・マーケット)の高音けたたましいアナウンスで始まる。これからやって来るハードバップ時代の「始まり」を高らかに宣言しているような、このピー・ウィーのアナウンスが良い。そして、出てくる演奏が「Split Kick」。これがまあ、すんごく格好良い演奏。
出来れば、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の Vol. 1と Vol. 2は連続して聴いてもらいたい。ピー・ウィーのアナウンスが要所要所に挿入されていて、まるでライブ演奏を目の前にして聴いている感覚になる。演奏のバリエーションも豊かで、2枚のアルバムを連続して聴いても飽きることが無い。
さて、ハードバップは、曲のコードをより細かく分けたり、テンポの速くして演奏をより複雑にしたり、演奏のニュアンス、バリエーション豊かにして、演奏の表現力を豊かにした、いわゆる「聴かせること」そして「アーティスティックなこと」を前面に押し出したジャズ演奏のスタイル。ジャズとして、一番ジャズらしいスタイルである。
この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』には、そんなハードバップの要素がぎっしり詰め込まれている。しかも、このアルバムはライブ録音盤である。つまり、1954年には、皆が皆では無いにしろ、このハードバップ的な演奏がライブで行われていたのである。当時のジャズの演奏レベルの高さというものを改めて感じる。
ハードバップは演奏の表現力の幅とバリエーションが広くなるので、当然、ミュージシャンとしての高い演奏能力が要求される。そんじょそこらのジャズメンではハードバップに追従出来ないということになる。当然、プロのジャズメンとしての選別も進む。ハードバップ時代を生き抜いたジャズメンは、皆、演奏能力については相当に高いものがある。
行方均さんが、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の演奏を捉えて、「もしハード・バップ誕生の時と場所というものが世の中にあるとしたら、本作の録音された'54年2月21日深夜のバードランドをおいて他にない」と表現されているが、確かにそう思う。
このアルバムからハードバップが始まったというのはちょっと誇大広告風だが、確かに、このアルバム以前の年代のジャズ盤については、ハードバップ的な、ハードバップの萌芽を聴くことができるものはあるが、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』ほど、徹頭徹尾、ハードバップとしての演奏が成立しているアルバムは無い。
職人録音師、ルディ・バン・ゲルダーのお陰で、1954年のライブ録音の割に音が良く、それぞれの楽器の演奏のニュアンスやテクニックがダイレクトに伝わってきて、ジャズの持つアーティスティックな面が体験できるところもこのアルバムの素晴らしいところ。
ジャズを聴き始めて、いきなりこのアルバムに飛びつくのは、ちょっと無謀だとは思うのですが、ジャズを聴き始めて、ジャズが心地良くなって、これからずっとジャズを聴いて行こうと思い立った時に、このハードバップの夜明け的な名盤を聴いて欲しいな、と思います。ジャズの表現力、芸術性、即興性に改めて感じ入って下さい。
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