穏やかで真摯なジャズロック
サンタナバンドでは無くてソロ名義で1980年の作品。リリース当時は、ジャズ界の有名ミュージシャンの参加がとても大きな話題を呼んだアルバムで、ジャズ者3年生の僕は、ワクワクしながらこのアルバムをリアルタイムで手にした思い出がある。
そのアルバムとは、Santana『The Swing of Delight』(写真左)。まず、パーソネルを。Carlos Santana (g), Herbie Hancock (key), Ron Carter, David Margen (b), Wayne Shorter, Russell Tubbs (ts,ss), Tony Williams, Graham Lear, Harvey Mason, Sr.(ds), Armando Peraza, Francisco Aguabella, Raul Rekow, Orestes Vilato (per)。
1976年の結成以降、大反響を巻き起こしたV.S.O.P.クインテットから、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスが参加。この3人は1960年代のマイルス黄金のクインテットのメンバーでもあり、とにかく、この当時のジャズ界の中堅人気ミュージシャンとラテン・ロックの雄、サンタナとの共演が大きな話題となった。
もともと、サンタナはジャズ志向な面があって、恐らく、このハービー、ロン、トニーの3人とは共演したかったと思われる。しっかりとリハーサルを積んでレコーディングに臨んだらしく、破綻の無い、なかなかしっかりとした真摯な内容に感心する。実に丁寧に作られた感があって、繰り返し聴いても、その良質な内容は劣化することは無い。
逆に、派手派手しいところや、やや破綻っぽくスリリングな側面は無いので、この大物ミュージシャン同士のセッションに、ハプニング的なものを期待している向きには不満の残る内容ではある。それだけ、丁寧に真摯に作り込まれている。
音の雰囲気としては、サンタナが主導権を握った「ジャジーなロック」と、ロック・ミュージシャンとジャズ・ミュージシャンが同じ土俵に立った「フュージョン・ジャズ」との2つの音の雰囲気でまとめられている。もちろん、どちらも優れた内容の演奏ばかりで、参加したミュージシャンのテクニックと力量がかなりのものだったことに改めて感心する。
特に、サンタナが主導権を握った「ジャジーなロック」は聴き応えがある。雰囲気的には、ジェフ・ベックの『ブロウ・バイ・ブロウ』や『ワイヤード』といった、ロック・ギターのインスト中心の、ジャジーでフュージョンな雰囲気が色濃いロックなアルバムを十分に認識し踏襲した内容で、サンタナ版の「ブロウ・バイ・ブロウ」みたいな響きが面白い。
それでも、さすがはサンタナで、サンタナのエレギの個性が十分に前面に押し出ていて、バックのジャズ・ミュージシャンの個性に押されること無く、逆に従える感じのセッションは、非常に安定感があり、良い意味で穏やかなジャズ・ロックに仕上がっている。
ロック・ミュージシャンとジャズ・ミュージシャンが同じ土俵に立った「フュージョン・ジャズ」な演奏も十分に聴き応えがある。仰々しい展開や荒々しい音のぶつかり合いは無いが、1980年当時のフュージョン・ジャズとしての最先端の音を聴くことが出来る。
これが上質のフュージョン・ジャズな演奏であり、ジャズとロックの融合の好ましい形のひとつだと僕は思う。このアルバムに詰まっている「穏やかで真摯なジャズロック」は、他の同様なセッションではなかなか聴くことが出来ないのは事実。
1980年のリリース当時から、あまり評価の芳しく無いアルバムですが、僕はそうは思いません。この当時のジャズ界の中堅人気ミュージシャンとラテン・ロックの雄、サンタナとの共演セッションに、何を期待するのかによって、このアルバムに対する評価は大きく分かれると思います。
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