ジャズ・オルガンの祖となった 『At Club Baby Grand』
このライブ盤によって、ジャズ・オルガンの音、ジャズ・オルガンの奏法が決定されたといっても過言では無い。このライブ盤でのジャズ・オルガンは驚異的ですらある。今をもって、このジャズ・オルガンを凌駕するキーボーティストはいない。
そのライブ盤とは、Jimmy Smith『The Incredible Jimmy Smith At Club Baby Grand, Vol. 1 & Vol. 2』(写真)。ブルーノート1528番と1529番。Club Baby Grandでのライブ音源。1956年8月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Thornel Schwartz (g), Donald Bailey (ds)。
かのマイルス・デイヴィスに紹介され、ブルーノート・レーベルのオーナー、アルフレッド・ライオンの眼鏡にかない、ブルーノート・レーベルからのジミー・スミスの登場をもって、ジャズ・オルガンの基準が確立された。そして、ジミー・スミスはジャズ・オルガンの祖となった。
Jimmy Smith At The Organ, Vol. 1から始まり、Vol. 3まで、スタジオ録音で、ジャズ・オルガンの演奏を整え、洗練し、その奏法と展開を確立。そして、満を持して世に問うたライブ盤がこの『クラブ・ベイビー・グランドのジミー・スミス』である。
このライブ盤でのジミー・スミスのオルガン演奏は圧倒的である。ビ・バップばりの目眩く速弾きの演奏もあれば、オルガンの深い情緒的な音を思いっきり活かしたバラード演奏あり、オルガンの黒いファンクネスを前面に押し出したブルース演奏あり、ジミー・スミスは自らのオルガン演奏の粋を尽くして、ガンガンに弾きまくる。
とにかく「上手い」の一言に尽きる。テクニックが抜群に素晴らしい。これだけの高度なテクニックを有してのジャズ・オルガンである。他の追従を許さないのも良く判る。これはフォロワーとして追従するには荷が重い。1956年にして、ジャズ・オルガンの世界は、ジミー・スミスの独走状態になる。
そして、ジミー・スミスのオルガンの音の特徴は、レスリー・スピーカーの存在。レスリー・スピーカーとは、ロータリースピーカーの一種。高音部用のホーンと低音部用のローターを、モーターで別々に回転させてコーラス効果を発生させ、音に広がりを与える仕組みをもったスピーカーのこと。このレスリー・スピーカーの効果が、このライブ盤では良く判る。これだけレスリー・スピーカーを上手く活用したオルガニストも珍しい。
初期のジミー・スミスのオルガンのピークを捉えたライブ盤と言って良い。ギターとドラムについては、ブルーノート・レーベルからすると、ハウス・ギタリスト、ハウス・ドラマーを見渡すと、もっと良い人選もあるとは思うのだが、ライオンはまだ、ジミー・スミスの人選のまま、彼の好きなままにさせている。
よって、このライブ盤で思いっきり目立って、思いっきり前面に出ずっぱりになるのは、ジミー・スミスのオルガンのみ。たまに、ソーネル・シュワルツのギター・ソロが展開されるが如何せん線が細い。ストローク奏法でバックに回っても、如何せん音が小さい。これでは目立とうにも目立たない。ドラムも忠実にリズムをキープする役割に徹していて、これもあまり目立たない。
つまり、このライブ盤は、ジミー・スミスのオルガンの独壇場。ジミー・スミスのオルガンだけが目立ち、ジミー・スミスのオルガンだけを愛でる。それに主眼をおいたライブ盤である。さすがはブルーノート・レーベル。さすがはアルフレッド・ライオン。狙いを絞った、素晴らしい意図のあるライブ盤によって、ジミー・スミスはジャズ・オルガンの祖となったのである。
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