このアルバムの邦題は『夢魔』
David Sanborn『Voyeur』(写真左)。1981年のリリース。大学前の行きつけの喫茶店で「耳タコ」になるくらいに聴きまくった、デイヴィッド・サンボーンの傑作である。
「Voyeur」の直訳は「窃視症の人、性的な面でのぞき趣味の人」。このアルバムの邦題は『夢魔』。なんで「夢魔」なのかは謎である(笑)。
前作『Hideaway』で、サンボーンの音楽性を確立し、アルバムもヒットした。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズを基本としながら、サンボーンの意外と硬派でハードなブロウを展開している、魅力的な傑作であった。そして、この『Hideaway』の後、この『Voyeur』=『夢魔』の登場である。
ソフト&メロウなフュージョン・ジャズを基本としながら、結構、ハードなブロウを展開してきたサンボーンが、この『夢魔』では、少し落ち着いたブロウを展開していて、アルバム全体の演奏のトーンとしては、1981年のリリースでありながら、後の「スムース・ジャズ」の萌芽の様な音作りとなっている。
パーソネルを見渡すと、このアルバムのフュージョン・ジャズとしての優秀さは当然のことの様に思える。David Sanborn (as), Marcus Miller (b), Hiram Bullock (el-g), Steve Gadd (ds), Lenny Castro (per), Buzzy Feiten (el-g, ac-gu), Buddy Williams (ds), Tom Scott (fl, ts), Michael Colina (OBX-syn)。
リズム・セクションは、ベースにマーカス・ミラー、ドラムのスティーブ・ガッド。そして、ギターにバジー・フェイトン、ハイラム・ブロックといった強者ギタリストを揃える。特に、このアルバムでは、ベースのマーカス・ミラーがチョッパー弾きまくりの格好良さ。縦ノリのガッドのドラムも心地良いビートを叩き出す。
特に、7曲目の「Just for You」は、マーカスのローズとサンボーンのサックスのデュオ。美しい曲。短いのが玉に瑕ではあるが、とても美しい。フュージョン・ジャズの到達点を聴く様だし、ソフト&メロウを前面に押し出した、後のスムース・ジャズの出発点とも言える音の雰囲気。こういう曲をラストにちょこっと置いているところなんぞ、このアルバムは隅に置けない。
リリース当時は、こんな垢抜けたフュージョン・ジャズは聴いたことが無く、大学前の行きつけの喫茶店で、毎日一回は聴いていました。それほど、聴き直す度に、いろいろと新しい魅力が聴こえてきて、全く飽きが来ませんでした。最後には、それぞれの曲のアドリブ・ラインまで口ずさめる位の「耳タコ」アルバムでしたが、決して飽きませんでした。
アルバム全体の収録時間がちょっと短いのが難点ですが、アルバムの内容としては、フュージョン・ジャズを代表する内容が詰まっているフュージョン・ジャズの傑作の中の一枚と言って良いでしょう。
バック・ミュージシャンのバックアップも良好で、グループ・サウンドとしても秀逸の出来だと思います。フュージョン者の方々にお勧めの一枚です。逆に、フュージョン者の方々だったら、既にお持ちですかね。良いアルバムです。
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