ホーズとヘイデン一期一会の邂逅
今年の7月、76歳で惜しくも鬼籍に入ってしまった、ジャズ・ベースの哲人チャーリー・ヘイデン(写真右)。このベースの哲人は「デュオ」の達人でもある。特に、ピアノとのデュオが得意で、何枚かの優秀盤を残している。
そんなヘイデンのベースとピアノの優れたデュオ盤の中で、異色のアルバムがある。Charlie Haden & Hampton Hawes『As Long As There's Music』(写真左)である。 1976年1月と8月の2つのセッションから成る。パーソネルは、Charlie Haden (b), Hampton Hawes (p)。
ここで「はぁ〜?」と思う。ハンプトン・ホーズがピアノである。ハンプトン・ホーズのピアノと言えば、オフビート感覚でもったりとした粘りがあって、跳ねるような弾くようなピアノが特徴。いわゆる「ビ・バップ」なピアノである。スタイルとしては、パウエル派の流れにある。
そんなハンプトン・ホーズのピアノである。エバンス派のピアニストや新主流派のピアニストとのデュオが得意のベースの哲人チャーリー・ヘイデン。はたして「ビ・バップ」なピアノとのデュオではどうなるのか、と思わず聴く前に不安になったりします。
そして、冒頭のハンプトン・ホーズの自作曲「Irene」を聴くと、思わず「え〜っ」と唸ってしまいます。なんと、「ビ・バップ」なピアノ、パウエル派のハンプトン・ホーズのピアノが、エバンス派のピアニストに変身しています。なんと全く柄にも無いリリカルなピアノ。僕は、このデュオ盤を最初に聴かされた時、このピアノはキースだと思いました(笑)。
それほど大変身のハンプトン・ホーズのピアノ。この冒頭の曲だけの「ご乱心」かと思いましたが、2曲目以降、ラストの「Hello/Goodbye」まで、エバンス派のピアニストに大変身。耽美的に、時にダイナミックに、時にモーダルにアドリブ・フレーズを弾き紡いでいきます。
その大変身のホーズのピアノに寄り添うように、ヘイデンのベースがフリーに絡みます。野太いベース音でありながら、ウォームでクッキリとした音像のヘイデンのベース。間と美しいフレーズを良く活かしたホーズとヘイデンのデュオ演奏は聴きものです。この様なデュオ盤が、1978年というフュージョン・ジャズが大流行の時代にリリースされていた訳で、ジャズの懐の深さを改めて感じます。
しかし、ビ・バップなピアノがスタイルのハンプトン・ホーズが、こんなリリカルなピアノを弾くなんてなあ。しかも、聴いていて、全く無理が無い。意外とこのリリカルなエバンス的なピアノがホーズの本質だったのでしょうか。ホーズは1977年5月に鬼籍に入っているので、このデュオ盤がホーズにとっての「白鳥の歌」だったのでしょうか。
とにかく、聴き応えのあるデュオ盤です。ポップなジャケットがどうも気になって、若い頃は敬遠していましたが、今では、この秋から冬の季節にかけて良く聴くデュオ盤です。リリカルなホーズとベースの哲人ヘイデン、一期一会の邂逅を楽しんで下さい。
震災から3年7ヶ月。決して忘れない。まだ3年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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