ジャズ喫茶で流したい・58
Denny Zeitlin(デニー・ザイトリン)。「医師とジャズピアニスト」という二足の草鞋を履く異色の人物である。今週の月曜日のブログ(左をクリック)でご紹介したのはデビュー盤。そして、今日、ご紹介するのは今年の7月にリリースされた最新作。
その最新作とは、Denny Zeitlin『Stairway to the Stars』(写真左)。最新作とは言っても13年前、2001年11月、カルフォルニアでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p), Buster Williams (b), Matt Wilson (ds)。なかなかのベースとドラムを従えた、ベテランピアニストのザイトリンである。
ザイトリンはデビュー盤の時から、彼の個性は完成されていた。ジャズ・ピアノのハードバップからモーダルなピアノへの、そしてその先のコードとモードの効果的使い分けの1970年のネオ・ハードバップへの進化という、時代を先取りした響き。
和音の作りはセロニアス・モンクを端正にした様な、やや不協和音がかった個性的な和音。フレーズは高速モーダル・ピアノ。エバンス派と解釈されつつ、ザイトリンの感覚は全く異質なピアノ。
そのデビュー盤が1964年の録音だったから、それから37年経っての、このライブ盤『Stairway to the Stars』である。ザイトリンのタッチは冷静であり、典雅であり、理知的である。そんなタッチの個性は、37年経ってのこのライブ盤でも、遺憾なく発揮されている。
逆に、若き日、1964年の録音では時々顔を出していたアブストラクトな面は、今回のこの2001年のライブ盤では、綺麗さっぱり一掃されている。リリカルで豊かな響きのザイトリンのピアノは、エバンス派のピアニストという印象をより強くさせている。
それでも、やや不協和音がかった個性的な和音、フレーズは高速モーダルな展開については、ところどころ見え隠れするところが面白い。単純なエバンス派では無い。ちょっと捻くれたエバンス派である(笑)。
ザイトリンは、1938年米国シカゴ生まれなので、この『Stairway to the Stars』をライブ録音した時、既に還暦を過ぎた63歳である。枯れた味わいでは無いが、落ち着いた、冷静沈着かつ理知的なザイトリンのピアノは、若き日と比べて、ダイナミックでは無いにしろ、緩やかではあるが、しっかりと進化、変化している。
クリヤーで明確なタッチとスイング感がとても心地良い。21世紀のザイトリンの指針ともなるべき、佳作だと思います。録音も良く、ザイトリンの冷静であり、典雅であり、理知的なピアノが堪能出来ます。選曲もスタンダード曲が中心でとても聴き易く、親しみ易い。
2001年の録音と既に13年前の録音ではあるが、ザイトリンの晩年期の佳作としてお勧めです。上質なピアノ・トリオ盤としても、ジャズ者初心者の方々にもお勧め。ザイトリンを愛でるに格好の一枚です。
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