哲人ベーシストのデュオ集です
2014年7月11日、ひとりのジャズ・ベーシストがあの世に旅立った。チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)。思索的なベース・プレイを感じて、僕は彼を「ジャズ・ベーシストの哲人」と呼ぶ。そんな「哲人」が遂に鬼籍に入ってしまった。残念である。
僕がチャーリー・ヘイデンの名を知ったのは、Ornette Colemanのあの問題作『The Shape of Jazz to Come(ジャズ来たるべきもの)』のベーシストとしてである。あの限りなくフリーキーなオーネットのアルトの底をしっかりと支えるベース。支えるだけで無く、その柔軟で暖かく硬質なラインで存在を主張するベース。
ジャズ者初心者の僕にでも、そのベーシストが優れものであり、ワン・アンド・オンリーな存在だと言うことが判った。思わず、思った「誰だろう」。その瞬間以降、「チャーリー・ヘイデン」の名前は僕の記憶に留まることになる。
そして、その後、直ぐにこのアルバムに出会う。Charlie Haden『Closeness』(写真左)。1976年のリリース。チャーリー・ヘイデンお得意のデュエット集。アルバムに収録された演奏は全4曲だが、リーダーのベースシスト、チャーリー・ヘイデンは変わらないが、曲毎にデュオの相手が変わる。
1曲目の「Ellen David」の相手はキース・ジャレット(Keith Jarrett)。硬質でリリカルで耽美的なキースのピアノに相対するヘイデンの柔軟で暖かく硬質なライン。この二人の相性はバッチリ。しかし、二人とも主張するタイプなので、以降、共演することはあまり無かった。それでも、このデュオ演奏は良く出来ている。この1曲だけでもこの盤は「買い」だ。
2曲目の「O.C.」は、1959年の『The Shape of Jazz to Come(ジャズ来たるべきもの)』で共演した、フリーキーなアルトの怪人、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)とのデュオ。『ジャズ来るべきもの』で共演しているので、お互いを知り尽くしている間柄。手慣れたデュオが展開される。あまりに手慣れ過ぎていて、ゴツゴツとしたところが無いのが玉に瑕。
3曲目「For Turiya」は、アリス・コルトレーン(Alice Coltrane)とのデュオ。アリスはピアノでは無くハープで参戦。音の抑揚や陰影が浅いハープはさすがに辛い。テクニックに問題があるのか、楽器自体に問題があるのか、定かでは無いが、このベースとハープのデュオはいただけない。特に、ハープに問題あり、と思っている。クラシックの様にハープを弾いても決してジャズにはならない。さすがに、このデュオ演奏はちょっと退屈。
4曲目の「For a Free Portugal」は、ドラム&パーカッションのポール・モチアン(Paul Motian)とのデュオ。ヘイデンの「唄う様なベース」が炸裂する。なにもベースラインをキープし供給するだけが、ジャズ・ベーシストの特徴では無い。唄う様に様々な旋律を奏でることだって、ベーシストの個性である。ドラム&パーカッションの響きは、アフリカン・ネイティブなもの。ベースとドラムのデュオ。意外と聴いてしまう不思議なトラック。
ハープのジャズはちとしんどいみたいだが、アルバム全体の雰囲気は実に良いもの。特に、ジャズ・ベーシストの哲人、チャーリー・ヘイデンのベース・プレイの素晴らしさは定評あるもの。このアルバムからも判る様に、ヘイデンはデュオが得意そうだ。アップテンポのウォーキング・ベースも揺らぎ無く、テクニックも優秀。
欧州風の美しいジャケットも良い。しかし、最近、このCharlie Haden『Closeness』のCDジャケットが写真右の様な、実に趣味の悪い、凡百なデザインに変わっている。収録されている演奏は同じなんだから、と妙な我慢をするジャズ者の方々の気持ちは理解出来ない。この『Closeness』のジャケットは、リリース当初のデザインに統一してもらいたい。
震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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