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2014年9月12日 (金曜日)

アグレッシブなオルガンを極める

ジミー・スミスのデビュー・アルバム。ブルーノートの1512番。『Jimmy Smith At The Organ, Vol.1 - A New Sound-A New Star』で、当時、ブルーノート・レーベルお抱えの録音技師、ルディ・バン・ゲルダーは、この広大なダイナミックレンジを誇る、このジミー・スミスのオルガンを上手く録音し、リマスタリングすることが出来なかった。

この『Jimmy Smith At The Organ, Vol.1』から約1ヶ月後、早々に、ルディ・バン・ゲルダーはリベンジにでる。『Jimmy Smith At The Organ, Vol. 2 - The Champ』(写真左)。ブルーノートの1514番。1956年3月の録音。パーソネルは、Jimmy Smith (org), Thornel Schwartz (g), Donald Bailey (ds)。

この『Jimmy Smith At The Organ, Vol.2』は、第1作と同様に、オルガン、ギター、ドラムスというトリオ編成は同じ。ドラムスがベイ・ペリーからドナルド・ベイリーに変わってはいるが、基本的には前作を踏襲した演奏内容。ジミー・スミスのオルガンは、ただただアグレッシブにダイナミックに疾走していく。オルガンの音のダイナミック・レンジが凄く広い。

冒頭の「The Champ」が凄い。凄いというか、激しいというか、実に攻撃的である。これだけ、長時間、攻撃的なソロを取れる楽器はハモンド・オルガンが最右翼。この「The Champ」って曲は、ビ・バップの創始者の一人、ディジー・ガレスピーの名曲。ビ・バップ曲という性格上、もともと曲自体が攻撃的ではあるが、このジミーのオルガンによる演奏は、その曲の性格を土台に、より一層に、よりアグレッシブに演奏している。

この『Jimmy Smith At The Organ, Vol.2』を聴き進めていて、つくづく思うのは、ジミー・スミスの指捌きの素晴らしさ。ジミー・スミスのプログレッシブで攻撃的なオルガンは、このジミー・スミスのテクニックの高さに負うところが大きい。そこそこのテクニックでは、前のめりな攻撃性が出ない。
 

Jimmy_smith_the_champ

 
さて、このアルバム、前作の雰囲気を引き継いだ「The Champ」以外の演奏はどうか言うと、ちょっと甘口スタンダード曲の「Deep Purple」や「Moonlight In Vermont」がまず良い。聴いていて、とにかく心地良い。甘さに流れるのでは無く、しっかりと硬派に滑らかに流れる。ポジティブな甘口スタンダード。

そして、2曲目の「Bayou」が出色の出来だろう。ジミー・スミスのオリジナル曲なんだが、これがまあ、素晴らしく硬派でビターなバラードで、とてもエモーショナルでダイナミックな佳曲です。演奏も立派。出だしは淡々と、ソロが進むに連れ熱気を帯び、やがて慟哭のような感情の高みに到達するアプローチは実に劇的です。ジミー・スミスの十八番、レスリー・スピーカーの効果は絶大ですね。

ちなみに、このアルバムの録音レベルはなかなか良いものがあります。一応、ルディ・バン・ゲルダーのリベンジは成ったみたいですね。ジミー・オルガンの合間や背後で、ソーネル・シュワルツのギターが良く聴こえるし、ドナルド・ベイリーのドラミングとジミー・スミスのオルガンとの音のバランスもまずまずといったところか。

『Jimmy Smith At The Organ, Vol.2』は、突出した表現力、凄まじいばかりのアグレッシブさ、広大なダイナミックレンジという、ジャズ・オルガンの祖、ジミー・スミスのオルガンを心ゆくまで堪能できるアルバム。録音バランスがとれた分、聴き易さが加わった。良いアルバムです。

 
 

震災から3年6ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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