ビッグバンド・ジャズは楽し・32
僕は、現代のビッグバンドの中でも、Maria Schneider Jazz Orchestraが大好きだ。マリア・シュナイダー(Maria Schneider)率いるジャズ・オーケストラ。パーマネントな活動を続けるビッグバンドとしては屈指の存在だ。
マリア・シュナイダーのジャズオケを好きな理由は、僕のこれまた好きなビッグバンドのコンダクター&アレンジャーの音の遺産をしっかりと引き継いで発展させているからだ。シュナイダーの師事したコンダクター&アレンジャーの一人が、ボブ・ブルックマイヤー。そして、もう一人がギル・エバンス。
ボブ・ブルックマイヤーについては、ポジティブにオープンに重ねたユニゾン&ハーモニーと、整然としたアンサンブルをバックにした、これまた整然としたアドリブ展開を、シュナイダーはしっかりと引き継いでいる。加えてパンチのあるアレンジは、実にビッグバンドとして聴き易く、判り易い音世界を提供してくれる。
ギル・エバンスについては、間の活かし方、木管楽器などユニークな楽器の組合せと低音の個性、モーダルな拡がりを持つ、墨絵のような濃淡のあるユニゾン&ハーモニー。そんなギル・エバンスのコンダクター&アレンジャーとしての個性をシュナイダーはしっかりと引き継いでいる。加えてエレクトリックな楽器の取り回し方と活かし方は、師匠のギル・エバンスの先を行く先進的なもの。
そんなシュナイダーの手腕が十分に味わえるアルバムが「これ」。Maria Schneider Jazz Orchestra『Coming About』(写真左)。1995年リリースのシュナイダー主宰のMaria Schneider Jazz Orchestraのセカンド盤。ジャズオケを指揮をする魅力的なシュナイダーの写真を使ったジャケットが印象的。
アレンジの個性と秀逸さは、スタンダード曲となった、2曲目「Love Theme From 'Spartacus' (スパルタカス・愛のテーマ)」と6曲目「Giant Steps」で体感出来る。特に「Giant Steps」については、このジャズオケの優秀さも大いに感じることが出来る。このシーツ・オブ・サウンドの塊の、どんどんコード・チェンジしていく曲を、疾走感を振りまきながら演奏しまくっていく。凄まじいテクニックである。
コンポーザーとしての個性と優秀さは、3曲目〜5曲目にかけての組曲「Scenes From Childhood」で十分に感じることができる。シュナイダーの書く曲は、決して「黒く」は無い。粘りも無ければ、ファンクネスも殆ど感じない。パット・メセニーの様な、フォーキーでネーチャーなシンプルで清涼感のある曲が個性。
そんな曲が、ブルックマイヤー風およびギル・エバンス風なアレンジに乗って、高テクニックなジャズオケが演奏しまくるのだから圧巻である。時にモーダルに、時に限りなくフリーに接近したアンサンブルも披露するのだから懐が深い。
日本ではなかなか大手のレコード会社は触手を伸ばさなかったのだが、このセカンド盤辺りから、大学のジャズ・オーケストラを中心に、マリア・シュナイダーの人気に火が付いた。今でも、一般にはなかなか入手するのに骨が折れるが、マリア・シュナイダーの人気は堅調である。さすが、日本の各大学のジャズ・オーケストラはレベルが高い。感心である。
マリア・シュナイダーは指揮する姿はダイナミックでエネルギッシュですが、普段はなかなかにキュートな才媛です。作曲面でも女性ならではのきめ細やかさもあり、日本を代表する穐吉敏子さんにも相通じるものがあります。現代のジャズオケとして、これからも長く恒常的な活動を続けて行って欲しいと願っています。
震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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