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2014年8月16日 (土曜日)

脳髄を刺激する「曼荼羅な音世界」

台風が西日本を南北に横断して以来、完全に天候不順に陥った日本列島。ここ千葉県北西部地方では、涼しい日が続いたり、急に思いっきり蒸し暑くなったり、今日などは梅雨の天気に逆戻りしたような曇天。

体調もかなり気候変動についていけなくなってきて、ちょっとへたり気味。こういう時は、耳当たりの良いフュージョン・ジャズなんかよりは、ガツンとくるメインストリームなジャズが良い。脳髄を刺激し、気分を思いっきり変えてくれる個性派ジャズが良い。

そこで選んだアルバムが「これ」。Roland Kirk『Volunteered Slavery』(写真左)。1968年7月と1969年7月の録音。10曲収録中、後半の5曲が、1968年7月7日のニューポート・ジャズ・フェスティバルでのライブ音源。前半の5曲が1969年7月のスタジオ録音になる。

ローランド・カークの演奏はライブ録音とスタジオ録音に差が無く、演奏のレベルにバラツキが無いのが凄い。基本的には、ライブ録音の方が荒くなる傾向にあるのだが、カークはそうはならない。テクニック・レベルが相当に高いのだろう。安定したレベルの高度な演奏を常に聴かせてくれる。

カークのリード奏者としてのテクニックは折り紙付き。端正かつ力感のあるリード・プレイは一級品である。加えて、ローランド・カークの個性は「マルチ・プレイヤー」。複数のリード楽器を一気に咥えて吹き鳴らすとか、唄いながらフルートを吹くとか、サイレンを鳴らすとか「マルチ・プレイヤー」としての個性である。そんな個性を存分に楽しむことが出来るアルバムが、この『Volunteered Slavery』なのだ。
 

Volunteered_slavery

 
冒頭の「Volunteered Slavery」から、ラストの「Three For The Festival」まで、目眩くローランド・カークの音世界が思いっきり展開される。徹頭徹尾、エモーショナルでエキサイティングなジャズが展開される。これだけ活き活きとしたリード楽器のプレイはそうそうあるものではない。

しかも、1968年から1969年という時代、ジョン・コルトレーンが急逝し、フリー・ジャズが迷走し始め、商業ロックが台頭し、ジャズがポップな音楽の座から転落し始めた時代。そんな時、これだけ、アーティスティックなメインストリーム・ジャズを展開していたことに驚く。

安易にフリー・ジャズに走ること無く、安易にクロスオーバー・ジャズに走ること無く、カークの個性のみを追求したプレイは感動の一言。コール&レスポンス、ゴスペル、スピリチュアルな歌詞にハンド・クラッピング、といった黒人教会の伝統的な音楽要素がてんこ盛りで、米国ルーツ音楽を深掘りしたジャズとしても興味が尽きない、ローランド・カークの「曼荼羅な音世界」である。

とりわけ、3曲目のスティーヴィー・ワンダーの佳曲のカバー「My Cherie Amour」と、9曲目の敬愛するジョン・コルトレーンの捧げたメドレー「A Tribute To John Coltrane: Lush Life/Afro-Blue/Bessie's Blues」にめっちゃめちゃ感動する。脳髄を刺激し、気分を思いっきり変えてくれる個性派ジャズである。

しかし、この『Volunteered Slavery』の邦題が凄い。『志願奴隷』。1970年代、このアルバムがレコード店に並んでいた時の邦題がこの『志願奴隷』。しかし、確かに直訳したら「志願苦役」なのだが、これはこれであんまりな邦題だろう。この邦題から、この素晴らしいアルバムの内容を想像するのは難しい。アルバム・タイトルに拘らずにこの名盤をご鑑賞いただきたい。

 
 

震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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