南佳孝の尖ったアレンジとサウンド
まだまだ暑いですね。しかも大気の状態が不安定とのことで、全国各地で大雨の情報がニュースを賑わしています。特に、洪水や鉄砲水、崖崩れなど、災害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。
さて、この蒸し暑い夏、私にとっての1970年代Jポップにおける「夏男」は、山下達郎、南佳孝、そして、矢沢永吉の3人。特に大学時代には、この3人のアルバムが、夏限定でヘビロテになりました。そこで、今日はそんな「夏男」の一人、南佳孝『MONTAGE』(写真)について語ります。
時は1980年5月、この『MONTAGE』はリリースされています。1980年と言えば、米国ポップスのトレンドは「AOR」。日本でもこの「AOR」が大流行。日本では、「AOR」=アダルト・オリエンテッド・ロックの略とされ、「大人向けのロック」として、アルバム全体としての完成度を重視し、音の雰囲気の基本は「ソフト&メロウ」であった。
そんな中、南佳孝もAORの代表的ミュージシャンの一人とされ、この『MONTAGE』の前にも『SPEAK LOW』『SOUTH OF THE BORDER』といった、思いっきり夏向けの、優れたポップ・ロックなアルバムをリリースしている。そんな南佳孝の5枚目のオリジナル・アルバムが『MONTAGE』。
それでは、この『MONTAGE』は、単純に流行を追ったAORなアルバムかと言えば、答えは「No」。当時としては、かなり尖ったアレンジとサウンドがギッシリ詰まった、思いっきりクールなアルバムだと思います。
そんな尖ったアレンジとサウンドを担っていたのは、当時一世を風靡したYMOの坂本龍一と大村憲司の2人。テクノ・ポップとはいかないまでも、そのテクノ・ポップな要素を上手くAORにミックスしたサウンドはとっても「お洒落」でした。
その象徴的なチューンが冒頭の「憧れのラジオ・ガール」。この「憧れのラジオ・ガール」は大好きな曲で、とにかくアレンジとバックの演奏がクールな、エバーグリーンな名曲です。ちなみにパーソネルは、高橋ユキヒロ (ds), 大村憲司 (el-g), 南佳孝 (vo), 坂本龍一 (key,syn), 松武秀樹 (syn,manipulator)。ほとんどYMOの世界ですね(笑)。
デジタル・ポップな感覚一杯のキャッチャーな曲ですが、テクノ・ポップっぽく無いのが、この曲のアレンジの優れたところ。デジタル・ポップな感覚をAORなアレンジに織り交ぜた、独特の響きと個性を持ったアレンジになっています。当時、この曲のアレンジを聴いて「ぶったまげた」のですが、今の耳にも新鮮です。
2曲目以降、レゲエあり、タンゴあり、GSフィーリングあり、ブルースあり、音作りの指向としては、フュージョンな指向で、1980年という時代の音楽のトレンドをしっかりと捉えていて、実にクールです。
前の『SPEAK LOW』『SOUTH OF THE BORDER』といったリゾート指向なアルバムと比較すると、この『MONTAGE』は、アーバン指向へとシフトしつつあるのですが、このアルバムはリゾート指向とアーバン指向の両方が絶妙のバランスで存在していて、これがまた、このアルバムのクールな響きの源となっているんですよね。
蒸し暑い夏。寝苦しい熱帯夜。深夜放送から流れてくる「憧れのラジオ・ガール」に耳を傾け、その後、導かれるように、この『MONTAGE』をかけながら、寝苦しい夜に耐えていました(笑)。大学時代の懐かしい思い出です。
震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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