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2014年8月29日 (金曜日)

橋本一子、思わず「再評価」です

グラミー賞ベストR&Bアルバムを獲得、一躍世界から注目を集めた衝撃作『ブラック・レディオ』 を引っさげ、メジャーとなったロバート・グラスパー。基本は「ヒップホップ」。そこに、オルタナなビートが漂いながら、メンストリーム・ジャズの要素が織り込まれていく。2012年のことであった。

アンブローズ・アキンムシーレ。『When the Heart Emerges Glistening』。邦題『うちなる閃光』。このアルバムには、現代ジャズのトレンドが、現代ジャズのスタイルがギッシリと詰まっている。朗読の響きは、まさにヒップホップ。これまでのジャズが経験してきた様々なスタイルに加えて、他の様々な音楽ジャンルの個性を様々な形で吸収した音世界は、ストレートに「新しさ」を感じさせてくれる。2011年のことであった。

この2枚のジャズ界最先端の音を聴いていて、どこかで聴いたことがある、と思い立った。そうそう、橋本一子『UB-X』(写真左)が同様な響きをしていた様な気がして、思わず聴き直してみた。

橋本一子はキーボード奏者。1980年のYMO初の国内ツアー「TECHNOPOLIS 2000-20」をサポートした時、僕はその存在を初めて知った。確かなテクニックと個性あるタッチに裏打ちされた、コンテンポラリーなジャズ系キーボードの音世界。これは凄い個性だなあ、と当時感じ入ったのを覚えている。

橋本一子はピアノ以外での個性に、外国語風のボイス・パフォーマンスがある。発声の形態は囁き、呟きの類からスキャット、シャウトに至るまで様々。正確には外国語では無い。自身も、声という「楽器」として捉えている。これがまた、とても幻想的でエスニックな響きに溢れていて、聴いていてとても素晴らしい雰囲気に感じ入る。

その橋本のピアノとボイス・パフォーマンスを堪能できるアルバムが、この橋本一子『UB-X』である。2006年のリリース。1999年に突然ピアノ・トリオ・アルバム『マイルス・アウェイ』を引っさげて、ジャズに乗り込んできた。そして、この『UB-X』。とにかく、ジャズとしての新しい響きに満ちている。
 

Ubx

 
ピアノが良い。しっかりとしたタッチで芯はあるが浮遊感溢れるモーダルなピアノ。クールな響きが凄く魅力的。これが2006年のコンテンポラリーなジャズ・ピアノの音か、とビックリする。橋本一子は素晴らしい。ファンキーな香りが全くしない、日本人ならではのクールなピアノの響きがとても良い。

そして、外国語風のボイス・パフォーマンスが良い。ほとんど、まるで限りなくクールな「ヒップホップ」。オルタナなジャジーなビートが重なり、クールでコンテンポラリーな独特の音の響きが良い。このボイス・パフォーマンスにはファンクネスは皆無。それでも響きは「ヒップホップ」。ジャジーなリズム&ビートがその響きを演出する。

この新しい響きを宿したアルバムが、2006年に日本人の手で創られたことに思わず胸を張る。逆にかえすがえすも残念に思う。この音世界がジャズ界に受け入れられるのは2010年を過ぎてから。

2006年は早すぎた。日本では一部の先進的で誠実な評論家やジャズ・ミュージシャンから絶賛されたが、ジャズ雑誌では大きく採り上げられることは無く、広く知られることは無かった。

2010年を過ぎて、アンブローズ・アキンムシーレやロバート・グラスパーなどが出てきて、やっと、この橋本一子の『UB-X』も再評価されても良い時代になった。実際に、このアルバムを聴き直して、現在のジャズの最先端に位置する音世界がギッシリ詰まっていることを確認した。橋本一子、再評価である。

このアルバムで、コンテンポラリーで魅力的な演奏を展開するのは「Future Trio」。そのパーソネルは、橋本一子 (p,voice), 井野信義 (b), 藤本敦夫(ds)。日本のジャズもなかなかイケてる。さすが「ジャズ先進国」である。

 
 

震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

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