僕の大好きなバーカー盤はこれ
ジャズ初心者の頃、なかなか難物だったチャーリー・パーカー。ダイヤル・セッションを聴いて敗退し、ルースト・セッションを聴いて敗退し、サボイ・セッションを聴いて敗退する(笑)。そんなジャズ者初心者の時代を過ごした訳で、ジャズを聴き初めて10年位は、僕は「ビ・バップ」が苦手だった。
ジャズを聴き初めて、15年位経った頃だろうか、憑きものがとれたように、自然にしっくりとビ・バップが耳に馴染むようになった。恐らく馴れたんだろう、ビ・バップのアドリブ・ラインや吹き回しのテクニックが理解出来る様になった。不思議なものである。
そんなこんなで、耳に馴染んだ「ビ・バップ」。チャーリー・パーカーのアルバムについても、ジャズ初心者の頃、なかなか難物だったダイヤル・セッションを克服、ルースト・セッションを聴いて克服、サボイ・セッションを聴いて克服して、なんとか、ジャズ者としての面目を保ったというか、ジャズ者としてなんとか自信を持つことが出来た。
でも、今でも良く聴くチャーリー・パーカーは、彼の音楽活動の晩年、ヴァーヴ時代のアルバムが聴き易くてお気に入りだ。特に1950年前後以降のセッションは、来るハードバップ時代の演奏トレンドを先取りした様な内容の濃い演奏もあって、聴きどころ満載。ビ・バップからハードバップへの移行は、様々な優秀なジャズメンのセッションを経て、比較的緩やかに実行されたと考えるべきだろう。一夜にして、ビ・バップからハードバップに移行した訳では無い。
そんな1950年前後以降のチャーリー・パーカーのアルバムで、僕が大好きなアルバムが、Charlie Parker『Swedish Schnapps』(写真)である。1949年5月と1951年8月のセッションから成るアルバムである。ちなみに、1951年のセッションのパーソネルが興味深い。Charlie Parker (as), Miles Davis (tp), Walter Bishop Jr. (p), Teddy Kotick (b), Max Roach (ds)。
いずれのメンバーも、後のハードバップで活躍するミュージシャンばかりで固められている。あの、後に「ジャズの帝王」と呼ばれたマイルス・デイヴィスも参加して、この時点で既に、いかにも後のマイルスらしいトランペットを披露している。他のメンバーも同様で、パーカー以外、かなりハードバップ的な、アーティスティックで聴く音楽としてのインプロビゼーションを意識して展開している。
パーカーは、ビ・バップだ、ハードバップだ、と言う前に、いつものパーカーらしく、大きな音でハイテクニックでメロディアスに吹き進める。パーカーらしい、しっかりクッキリと硬派なブロウが堪りません。「ビ・バップ」を「聴かせる」ジャズ盤として、このアルバムの存在は大きいですね。ハードバップな耳にも十分に馴染みます。
思い起こせば、このアルバムはジャズ者初心者の頃、清水の舞台から飛び降りる気分で、思い切って購入した3枚目のパーカー盤でした。僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半は、まことしやかに「ヴァーヴのバードは駄目だ」と言われていました。でも、このアルバムは違うぞ、と感じました。ただ、ジャズ者初心者の感じた感想です。決して口外することは無かったんですが(笑)。
この盤にはブルース曲が多く収録されているところが聴いていて楽しいところ。1曲目 の「Si Si」からブルース曲が炸裂です。「Back Home Blues」と「Blues for Alice」も題名を見てのとおり、それぞれ順にCそして、Fのブルースです。「Au Privave」はFのブルース。マイルスがなかなか張りのあるソロを披露しています。
マイルスと言えば「She Rote」では、ミュート・ソロを聴かせてくれます。後のマイルスの十八番となった「ミュート・トランペット」。この「She Rote」のマイルスは、若き日のマイルスの代表的なミュート・ソロのひとつと言えます。逆に「K.C. Blues」でのマイルスはとてもぎこちない(笑)。演奏毎に好不調の波があるマイルスというのも、若さ故という感じで、とても微笑ましいです。
このCharlie Parker『Swedish Schnapps』は、僕の大好きなバーカー盤。1950年前後の録音なので、録音状態もまずまずで、鑑賞に十分に耐えるレベルであるというのも嬉しいところ。これからバードを聴きたいなあ、と思われているジャズ者初心者の方々に、お薦めの一枚である。
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こんにちは。
パーカーの入門盤にはVerve盤というのは同意です。もっと崩して、ベスト盤でも充分、とも思いますね。
私もパーカーは長らくワカランチンだったんですが、JAZZのCDなど手に入らない国に数年住んでいる間、あるときどういうわけかVerveのパーカー・ベスト盤がポツンと入荷してたんですな。ええ、すぐ買いましたよ。聴くものないもんで1日に10回位聴きました。それでパーカーに開眼した、というわけです。
ベスト盤ですから、もちろんどっかで聴いた曲ばかりなんですが、1曲だけIn the Still of the Nightだけは初めて聞く曲。これは、白人コーラス(Lambert & Ross入り)+スモール・オーケストラ(編曲Gil Evans)に乗っかってパーカーが吹きまくるというちょっと珍しい曲です。パーカーとコーラスのコンビネーションがイマイチで成功作とは言いがたいが、とてもおもしろい。
もともとがJAZZ PARENNIALという寄せ集め盤に収録されたものなので、あまり知られていない。聴いたことある人は今も少ないかもしれませんね。
投稿: orubhatra | 2014年7月25日 (金曜日) 22時42分
こんにちわ。私もバードは長年難行?の対象でした。映画「バード」を見たとき、あの60年代後半にジミヘンがチャートインしたなどという信じがたい現象と共通するものを感じました。
いわゆる「時代の音」としてウケていたのだなあ。。と。
アドリブの天才といわれますが、近年の「別テイクの羅列盤」をきくにつけ所詮はこのていどの違いかあ・・としか思えず、いったいこのどこがアドリブの天才なのだ?と今でも理解ができていません。(笑)
それと、キャノンボールやウッズあたりから聞き始めた私にはさかのぼってパーカーをきいても今でも楽しめませんです。
スーパーサックスの「プレイズ・バード・ウィズ・ストリングス」を聴いてはじめてパーカーもたのしめるかなあ?と思いましたが、やはり自分には無縁のアーティストですぅ。(笑)
追伸「映画バード」での最大の「ウソ」といえば、あの当時のニューヨークといえども、黒人が白人の女房を連れて堂々としていられたはずがない、とアメリカのジャズフアンがネットで語っていましたが、あれは監督のイーストウッドの「願望」?なのだ、と思っていますだ。(笑)
投稿: おっちゃん | 2015年2月 6日 (金曜日) 18時01分