駄作無しの職人芸的フュージョン
Fourplay『Esprit De Four』(写真左)。『エスプリ・ドゥ・フォー』は、フォープレイの13枚目のアルバム。2012年のリリースになる。
フォープレイは、ベテラン・フュージョン集団。この13枚目のアルバムでのパーソネルは、Bob James (key), Nathan East (b), Chuck Loeb (g,syn), Heavey Mason (ds,per,vib,syn)。ギタリストがラリー・カールトンよりチャック・ローブに交代してからの第2弾。
これだけ充実した、高テクニックで内容のあるフュージョン・ジャズを聴くと、フュージョン・ジャズはしっかりとした、アーティステックなジャズの演奏形態のひとつなんだなあ、と改めて感じ入ってしまう。まあ、メンバーがメンバーだけに、その出来は相当に良いものになる、と想像できるんだが、このフォープレイという集団は、それをいとも簡単そうに成し遂げてしまう。
とにかく、これだけのメンバーがしっかりと曲とアレンジを仕込んで、加えて、しっかりとリハーサルもするんだから、そりゃあ良いアルバムが出来るでしょう。でも、それを実際に実現してしまうところが、このベテラン・フュージョン集団の凄いところ。
このアルバムでは、ギターのチャック・ローブが大活躍。フォープレイの音世界は、ジャジーでブルージーな、いかにもジャズ、って感じの音世界とは正反対の、クリアでフォーキーでクロスオーバーな音世界が身上。チャック・ローブのギターがそんな音世界にピッタリ。このアルバムは、チャック・ローブの為にある様なアルバムだ。
それでは、このアルバムにジャズ的な要素は無いのか。いやいや、それがあるんですね(笑)。表立って「ジャジーでブルージー」って感じを醸し出すのでは無く、演奏する音の端々で、そこはかとなく「ジャジーでブルージー」な雰囲気を漂わせる。そんな感じのネイザン・イーストのベースが憎い。そして、適度にラフなハービー・メイソンのドラムそのものが「ジャジーでブルージー」。
曲も良いが、メンバーそれぞれの楽器の演奏が素晴らしい。演奏の音それぞれをいろいろに楽しめる、感じ入る、感動する、そんな魅力的な演奏がギッシリ詰まったアルバムです。演奏自体を楽しむ、という面は「ジャズの原点」のひとつ。このベテラン・フュージョン集団は、やはり只者ではありません。駄作無しの職人芸的フュージョン。聴けば聴くほど味が出る。
これだけ優れた内容のフュージョン・ジャズを聴けば、1970年代から始まったフュージョン・ジャズも年を経る毎に進化して来たことが良く判る。フュージョンは今やしっかりとした、アーティステックなジャズの演奏形態のひとつである。フュージョン・ジャズを聴いて感じ入っていた自分が恥ずかしいなどというジャズ者の方々もいるが、アートとして音として楽しめれば、それはそれで良いのではないかと思う。
ボブ・ジェームスが東日本大震災の復興のために書き下ろした「Put Our Hearts Togather」を収録。歌手の松田聖子がゲスト参加したヴォーカル・ヴァージョンも収録しているが、ジャズとして聴くと出来はパッとしない。松田聖子のボーカルもジャズとして聴けば古風な佇まい。どうもこれは蛇足だろう。
震災から3年4ヶ月。決して忘れない。まだ3年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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