フュージョン・ジャズの骨子
フュージョン・ジャズって、どんな雰囲気のジャズなんですかと問われれば、やっぱり、このアルバムは出すなあ。絵に描いた様なフュージョン・ジャズ。ジャズとAORとR&Bが融合した、万民向けのフュージョン・ジャズ。
そのアルバムとは、George Benson『Breezin'』(写真左)。1976年のリリースである。時代はクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズへの移行時期。商業ロックに翳りが見え始めマンネリズムに陥り、AORは、兆しはあるが、まだ流行にはなっていない。そんな時代にこのアルバムである。
冒頭のタイトル曲「Breezin'」の前奏のリフを聴くだけで、このアルバムの成功は約束されたも同然。凄くキャッチャーで印象的なリフ。米国西海岸の爽やかな風のような、スピード感+爽快感なリフ。そんなリフに続いて出てくる、心地良いフレーズが爽快感抜群、躍動感抜群。やはり、フュージョン・ジャズの主役はエレギやなあ〜、と感じ入る。
続く2曲目「This Masquerade」。レオン・ラッセルの名曲。カーペンターズの歌唱で有名。そんな米国ポップスの名曲をカバっている。唄うジャズ・ギタリスト、ジョージ・ベンソンの面目躍如、ソフト&メロウなAORを先取りする、柔らかくもコクのあるベンソンの歌唱は一級品。思いっきりムーディーな、それでいて切れ味のある歌唱。
冒頭の「Breezin'」と2曲目の「This Masquerade」の2曲で、このアルバムはフュージョン・ジャズの名盤となることを約束されたと言って良い。それほどまでに優れた演奏で有り、優れたボーカルである。この2曲がソフト&メロウなフュージョン・ジャズの雰囲気とアレンジの方向性を決定付けた。
3曲目の「Six To Four」以降の曲も、いずれの曲も出来が良い。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが、爽やかにリズミカルに駆け抜ける。4曲目の「Affirmation」は、ホセ・フェリシアーノの作った「アファメイション」のカバー。ベンソンの壮絶なアドリブが聴ける。フュージョン・ジャズは緩いなどと言ってはいけない。このベンソンのアドリブは凄い。
ドラムスのハービー・メイソンのちょっとラフで余裕のあるノリが良い。クラウス・オーガマンの弦のアレンジも、ちょっと古さと懐かしさを感じつつも秀麗。このアルバムは、フュージョン・ジャズの代表的メンバーが集結した優れものであるとも言える。主役のベンソンだけが目立つのでは無い。アルバム全編に及ぶ全ても演奏が充実しているのだ。
聴き直してみて、やっぱりこの『Breezin'』は、フュージョン・ジャズの名盤の一枚。フュージョン・ジャズとは何か、と問われれば、僕はこのアルバムを差し出す。このアルバムには、フュージョン・ジャズの骨子が詰まっている。
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