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2014年6月 1日 (日曜日)

大江千里の「考えるジャズ」

2007年、大江千里がジャズ・ピアニストに転身するというニュースを聞いた時、ビックリすると同時に「頑張れ」とも思った。そして、単身NYに飛び、満50歳を境に、大江千里はジャズ・ピアニストとしての活動を始めた。

2010年12月にリリースされた河上修とのデュオ盤『duo』を聴いた時は、これはいけるな、と思った(2013年9月10日のブログ参照・左をクリック)。大江千里のピアノは個性的。どこかで聴いた様な雰囲気なんだが、リズム&ビートとタイムの取り方が独特なので、意外と大江千里独自の個性として成立している。

テクニックはそこそこ。でも、テクニックがそこそこでも、意外と味のあるジャジーなピアノを聴かせる。リリカルで内省的。テクニックで勝負するピアノでは無い。印象的なアドリブ・フレーズと間の取り方を工夫した、「腕」では無く、いわゆる「味」で聴かせるピアニストである。若い時からの根っからのジャズ・ピアニストには、このタイプは皆無なので、この大江千里のピアノはユニークな存在ではある。

そして、2012年、NYのジャズの専門学校「The New School for Jazz and Contemporary Music」を卒業、7月にはジャズピアニストとしてのデビューアルバム『Boys Mature Slow』(写真左)をリリース、日本盤も同年9月に追って発売された。

この大江千里のデビュー盤『Boys Mature Slow』は、ピアニスト単体のアルバムでは無い。ピアニストに加えて、ジャズ作曲家、編曲家、プロデューサーという「総合力」を全面に押し出したアルバムである。聴けば判るのだが、本当によくよく考え、よくよく練られた、大江千里の「考えるジャズ」である。
 

Boys_mature_slow

 
冒頭の「Tommy Who Knew Too Much」を聴けば、その大江千里の「考えるジャズ」が良く判る。ピアノは、テクニックはそこそこだが、しっかりと味のあるジャジーなピアノで、印象的なアドリブ・フレーズと間の取り方を工夫した大江千里独自の個性が十分に感じられる。

そして、アレンジが良く練られている。ジャジーな雰囲気とグルーヴの表現に重きを置いたアレンジは、聴いていてとても「ジャズ」を感じる。現在の純ジャズ、コンテンポラリーなジャズの雰囲気を十分に聴かせてくれるアレンジはとても優秀だと思う。

そして、ジャズ・ピアニストへの転身だからといって、ピアノ・トリオで勝負してこないところが、これまた理知的である。テクニックで勝負するタイプのピアニストでは無い大江千里。「腕」では無く、いわゆる「味」で聴かせるピアニストなので、ピアノ・トリオは不利だ。

このアルバムでは、上手くトランペットとサックスを織り交ぜて、ジャジーな雰囲気とグルーヴの表現を更に確固たるものにしている。この管楽器の使い方が上手い。アレンジとプロデュースの妙。この大江千里のアルバムを聴いていて、ギル・エバンスやクインシー・ジョーンズの影を感じたのは僕だけだろうか。

ジャズの感覚というのは、頭で考え頭で身につけるものでは無い。そういう意味で、大江千里はジャズへの転身については上手くいったのではないかと、このアルバムを聴いて感じた。彼のピアノについても、アレンジについても、作曲についても、ジャズの感覚に上手く追従している。ジャズの感覚が自然と血となり肉となるは時間の問題だろう。もう心配はいらない。

 
 

大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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