寺井尚子の最新作『Very Cool』
もともと、寺井尚子のジャズバイオリンはお気に入りである。ジャズバイオリンと言えば、純ジャズ系ではステファン・グラッペリ、フュージョン系ではジャン・リュック・ポンティくらいしか、演奏家の名が浮かばない。ジャズとして、いわゆる「希少」な楽器ジャンルである。
寺井尚子のジャズバイオリンは、純ジャズとしてはステファン・グラッペリ、フュージョンとしてはジャン・リュック・ポンティと比肩するテクニックとセンスを持っており、世界のレベルで十分勝負出来るものだ。
初リーダー作『Thinking of You』は、バップ・チューン「Donna Lee」の超絶技巧な演奏をベースに、純ジャズとしてのジャズバイオリンの秀作だった。それから、ずっと純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーなアルバム」をリリースしてきた。
しかし、どうも『My Song』あたりから、ジャズ・アルバムというよりは、イージーリスニング寄りの耳当たりの良い、聴き心地の良いアルバムをリリースするようになったなあ、という印象があって、どうにもこれはなあ、という感じで、寺井尚子のアルバムからは暫く遠ざかっていた。
が、今回の新作、寺井尚子『Very Cool』(写真左)は久し振りに「ジャジーなアルバムの雰囲気」。北島直樹 (p), 店網邦雄 (b), 中沢剛 (ds) による気心知れたレギュラーメンバーのトリオ演奏をバックに、寺井尚子がバイオリンを弾きまくるという、従来のジャジーな演奏スタイルが戻って来たようなのだ。
しかも、ヴァイブの山本玲子、クオシモードのパーカッション松岡Matzz高廣がゲスト参加。バイオリン一本のフロントだと曲によっては、どうしてもイージーリスニング風の展開になってしまいがちなところを、ヴァイブの参加が上手くクリアしている。パーカッションの参加もグッド。ドラム一本で単調になりがちなリズム&ビートをバリエーション豊かにしている。
選曲もジャズっぽくて良い。1曲目の「Manha De Carnaval」、3曲目の「Cantaloupe Island」、7曲目の「Tempus Fugit」、8曲目の「Everything Happens To Me」の存在に思わずニンマリ。
加えて、ヴァイブの山本玲子、クオシモードのパーカッション松岡Matzz高廣のゲスト参加ということで、今回はきっと、純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーなアルバム」になっていると踏んで、久し振りにアルバムをゲット。
確かに、この『Very Cool』は、久し振りにジャジーな内容。2曲目の「Quizas. Quizas. Quizas」の存在には首を傾げたくなるが、その他の曲の選曲とアレンジ、プロデュースについては、純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーな雰囲気」。最後まで、ジャジーな感覚で楽しむことが出来ます。
やはり先に挙げた「ニンマリする選曲」である、「Manha De Carnaval」「Cantaloupe Island」「Tempus Fugit」「Everything Happens To Me」が良い出来だと思います。山本のヴァイブも松岡Matzz高廣のパーカッションも、ファンクネスは仄かに香る程度で、シンプルでストレート。様々なアレンジ、ニュアンスに適応するもので、これもグッド。
寺井尚子のバイオリンは優秀。テクニックも更に高みに達した感がある。バイオリンの音も豊か。アルバム全体の録音も優秀。久し振りに寺井尚子のアルバムをジャジーな感覚で楽しむことが出来ました。
大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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