somethin'elseレーベルのウッズ
「somethin'else」は日本制作の、BlueNoteの姉妹レーベル。レーベル名はBlueNoteのベストセラー・アルバム、Cannonball Adderley『Somethin' Else』からの借用。1988年、日本にて設立。昨年は25周年。売れ線のアルバム中心にリイシューされたのも記憶に新しい。
ハードバップからモード、新主流派から新伝承派と、メインストリーム・ジャズが中心の制作パターン。プロデュースの方針は基本的に「日本人好み」がメイン。選曲からアレンジから、どこをとっても日本人の仕業である(笑)。
しばらくの間、廃盤状態が続いたアルバムが多く、我々、ジャズ愛好家、いわゆる「ジャズ者」からすると「困ったなあ」な状態。しかし、昨年25周年の節目の年を迎え、人気の高いアルバムを中心にリイシューされた。思わず、手当たり次第、10枚ほど「大人買い」してしまった(笑)。
そんなsomethin'elseレーベルの音を、しっかりと感じることが出来るアルバムの中の一枚が、Phil Woods『Cool Woods』(写真左)。1999年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Phil Woods (as), Junko Onishi (p), Ron Carter (b), Bill Goodwin (ds)。
まず、パーソネルをみれば、この人選は「日本人好み」でしょう。ベテランのアルト、フィル・ウッズがリーダー。このウッズのチョ イスからして「渋い」。玄人好みのリーダーの人選。そこに、日本人ジャズ者が盲目的に愛するベーシスト、ロン・カーター。そして、これまた渋い人選、堅実かつ確実なドラマ−、ビル・グッドウィン。そして、日本人好みの極めつけは、若手女性ピアニスト、大西順子の選択。
1. Lullaby Of The Leaves
2. All The Things You Are
3. 'Round Midnight
4. You Don't Know What Love Is
5. Embraceable You
6. Samba Dubois
7. What Are You Doing The Rest Of Your Life
加えて、上の収録曲のリストを見て欲しい。アルバムの収録曲の選曲が実に「日本人好み」。ジャズ・スタンダードのオンパレード。超有名なスタンダード曲から、玄人好みの渋くて粋なスタンダード曲まで、いやいや、こんなにスタンダード曲ばかり選曲しなくても良いのになあ(笑)。
さて、このアルバムの内容は、と言えば、徹頭徹尾、非常に良く練られたハードバップな演奏。しっかりリハーサルも積んでいるみたいだし、アドリブ・フレーズも「こんな雰囲気で」と事前に合意されているみたく、淀みなく破綻無く流れる様なフレーズがてんこ盛り。ちょっと作られた感があって、オーバー・プロデュースか、とも思ってしまうほど、端正な出来である。
そんな端正なハードバップな演奏の中で、フィル・ウッズのアルトが素晴らしい出来。エモーショナルに、ブラスを鳴り響かせる様に吹き上げるウッズのアルトは、アルバム全編に渡って「絶品」である。スタンダード曲は、それぞれ歌ものなんだが、この歌ものを吹かせると、ウッズはその実力を遺憾なく発揮する。このアルバムは、ウッズのみを愛でる盤。ウッズだけが突出して出来が良い。
このアルバムの「売り」の大西順子のピアノは宣伝文句ほどに耳を惹くものは無く、大人しい。曲毎に様々なスタイルのピアノを展開するが、器用なところだけが目立ってしまい、ちょっと損をしている。ロン・カーターのベースも控えめ。やはり、ロンのベースは、モーダルな展開にこそ、その実力が出るみたいで、純粋ハードバップな演奏は意外とスタンダードで突出してものは無い。
ビル・グッドウィンのドラミングについては「聴きもの」です。堅実で洒脱なドラミングは粋で渋い。しっかりとウッズのインプロビゼーションをサポートし、鼓舞する。このアルバムでのウッズの好調さは、このグッドウィンのドラミングに負うところが大きいと思います。新しい響きもみえかくれして、現代のハードバップなドラミングを聴かせてくれます。
とにかくウッズのアルトが美しくかつ逞しい。大スタンダード大会なアルバムですが、凡庸なハードバップ盤に陥らないのは、ひとえにウッズのアルトのお陰でしょう。ちょっと日本人臭さが気にはなりますが、このアルバムは、アルトのウッズを愛でるに相応しい好盤だと思います。
大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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