« ヴィダルのカバーに耳を傾ける | トップページ | 大江千里の「考えるジャズ」 »

2014年5月31日 (土曜日)

懐かしの『かもめのジョナサン』

昔々、日本でもその小説はベストセラーになった。その小説の名は『かもめのジョナサン(Jonathan Livingston Seagull)』。リチャード・バック作の寓話である。1970年に出版。1972年6月以降に大ヒットとなる。1973年には映画化。日本では1974年、五木寛之の訳で出版され、ベストセラーとなった。

主人公のカモメ、ジョナサン・リヴィングストンが、飛ぶということに価値を見出し、速く飛ぶことにチャレンジし続ける。その訓練は他の普通のカモメからすると、完全に「奇人変人」の類であり、異端として群れから追放されてしまう。それでも速く飛ぶ訓練をやめないジョナサン。

ここからが完全に現実離れしていくのだが(ここまでもかなり現実離れしているか・・・)、「目覚めたカモメたち」の世界の中に導かれ、カモメの長老から「瞬間移動」を伝授される。そして、その「飛ぶことの価値」を伝播するためにジョナサンは下界に立ち戻る訳だが、その怪しさ故に下界のカモメからは悪魔と恐れられる、なんていう寓話である。

実は、この話の展開が高校生だった僕達の心にグッときて、小説を皆で読み、皆で映画も見に行った思い出がある。その映画の音楽がとても良かった。当時、米国で人気のSSWだったニール・ダイアモンドが劇中歌を唄い、ストリングス中心のインスト曲は、どれもが当時として新しい感覚のダイナミックでポップな展開を持つ優れものだった。

確かに、この『かもめのジョナサン』のサウンドトラックは、生楽器中心のストリングスがベースのもので、曲の構成、展開がダイナミックで組曲風。メロディーがポップで、ニールのガッチリとした正統派ボーカルと相まって、聴き心地は抜群。
 
当時、流行っていたプログレッシブ・ロック的なテイストが色濃く、我々聴く方としては、プログレのアルバムを聴く様な雰囲気で楽しめる、当時としては、なかなか先進的な内容のサウンドトラックだった。
 

Jonathan_livingston_seagull

 
そのサウンドトラックを僕は長くFMからエアチェックしたカセットで所有していた訳だが、今から10年ほど前、カセットの音源を整理した際、この『かもめのジョナサン』のサウンドトラックについては音質の劣化が激しく、破棄してしまった。CD化されてるのかと探したが、当時は日本盤しか調べることをせず、CD化されていないことを知って、この音源については再所有を諦めてしまった。

が、大震災の後、書庫を整理していて、この『かもめのジョナサン』の小説を発見し、小説を読み進めるうちに、サウンドトラックの存在を思い出した。最近のことである。当然、amazon等を検索し、程なく、Neil Diamond『Jonathan Livingston Seagull : Original Motion Picture Soundtrack』(写真左)としてCD化されていることに気が付いた。

当然、即ゲットである(笑)。10数年ぶりに聴く、『かもめのジョナサン』のサウンドトラックは、ただただ懐かしく、このサウンドトラックに耳を傾けていた、当時の高校の映画研究部の部室の風景を思い出した。そして、このサウンドトラックの内容は、今の耳で聴いても、殆ど古さを感じること無く、当時と同様、プログレのアルバムを聴く雰囲気で十分に楽しめた。

ニール・ダイアモンドのボーカルが実に心地良く響く。もともと滑舌が良く、発音の良いニールのボーカルは聴いていて気持ちが良い。メロディアスでダイナミック、メリハリのあるニールのボーカルは味わい深い。「BE」「DEAR FATHER」「LONELY LOOKING SKY」「SKY BIRD」、いずれの曲も素晴らしい。

しかし、映画はDVDにはなっていないようだ。まあ、それもそのはず、この1973年にホール・バートレット監督によって映画化されたのだが、原作同様に人間は一切登場せず、調教されたカモメが画面を飛び交う、いわゆる「シネポエム」の雰囲気を持ったもので、当時、映画館でこれを観た時はちょっと戸惑った。正直に言うと、今、DVD化しても売れるかどうか、ちょっと怪しい内容ではあるのだ。

それでも、このサウンドトラックは内容がある。CDとして再び入手できたことは祝着至極。いやいや、長生きはしてみるものだ。この歳になって『かもめのジョナサン』のサウンドトラックを再び、CDとして手に入れることが出来た。

 
  

大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« ヴィダルのカバーに耳を傾ける | トップページ | 大江千里の「考えるジャズ」 »

コメント

はじめまして、mazuと申します。おちゃらけで音楽紹介のブログを書いてます。

この度、「かもめのジョナサン完成版」が発売されたことを記念して、1973年の映画のサウンドトラックから曲を紹介する記事を書き、同じアルバムについての過去記事を検索して貴ブログのこの記事を見つけました。

事後承諾ですみませんが、拙ブログ記事内でリンクを貼らせていただきました。

これまでにも貴ブログの記事はとても素晴らしい内容なので何度も拝見して、参考にさせていただいていました。どうもありがとうございます!

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 懐かしの『かもめのジョナサン』:

« ヴィダルのカバーに耳を傾ける | トップページ | 大江千里の「考えるジャズ」 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー