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2014年5月29日 (木曜日)

ブルーベックの「米国の印象」

デイヴ・ブルーベックとポール・デスモンドのコンビは、1951年の出会いから延々と続く。最低15年はベッタリだったと思われる。そして、このコンビは、米国での人気は上々で、毎年1〜3枚のペースでアルバムをリリースしたりしている。

それだけ多くのアルバムをリリースしていると、通常のアプローチ、いわゆるスタンダード曲中心にオリジナル曲2〜3曲か、若しくはスタンダード集で攻めると確実に飽きる。聴く方も飽きるし、演奏する方も飽きる(笑)。そこで、このデイヴ・ブルーベックとポール・デスモンドのコンビは、3つのシリーズ物を仕立てて、そんな「飽き」を回避しようとした。

その3つのシリーズ物とは、まずは、かの『Time Out』に代表される変拍子を駆使したプログレッシブな「タイム」シリーズ、米国の大学を訪問して回ったライブ音源を基にした「カレッジ」シリーズ、そして、様々な国や土地の印象を音で綴った「ジャズ・インプレッションズ」シリーズ。 

日本で一番マイナーなシリーズが、三番目の「ジャズ・インプレッションズ」シリーズである。何故か日本では受けが悪い。恐らく、ジャズというアーティスティックな音楽で国や地方を紹介するというアプローチが、思いっきり「キワモノ」っぽく感じるんだろう。特に、硬派で真面目なジャズ者の方々からしてみたら、許せない行為、なんだろうな。

でも、この「ジャズ・インプレッションズ」シリーズって、アバウトな米国人っぽくて聴いていて面白い。どうしてこうなるかなあ、という様なアプローチが出てきたりして思いっきりズッこけたりする。しかも、デイヴ・ブルーベックとポール・デスモンドのコンビは、極めて真面目に演奏しまくるのだ。

そんな「ジャズ・インプレッションズ」シリーズの筆頭が、Dave Brubeck『Jazz Impressions Of U.S.A.』(写真左)。1956年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Dave Brubeck (p), Norman Bates (b), Joe Morello (ds)。もうドラムは、「タイム」シリーズで名を馳せたジョー・モレロが担当しているとは、ちょっとビックリ。
 

Jazz_impressions_of_usa

 
日本では、LP時代から、この 『Jazz Impressions Of U.S.A.』はリイシューされることは少なかったと記憶している。CDとしても、やっと最近リイシューされたくらいだ。本当に日本では人気の無い「ジャズ・インプレッションズ」シリーズである。

では、アルバムの内容は、と問えば、これが出来が良い。ブルーベック・カルテットとしても上位にランクするんじゃないか。ブルーベックのピアノも過剰にスクエアにスイングすること無く、端正にして明快。現代音楽風のアブストラクトな展開もここには無い。

デスモンドのアルトも過剰にソフト&メロウに走ること無く、端正にして明快。ベイツのベースはブンブン野太い低音でビートを支え、モレロのドラムは切れ味良くリズムをキープする。充実した共演者に恵まれ、カルテットは軽快に疾走する。

後の十八番となる「Summer Song」の初演が良い。美しくも明るいポジティブな演奏は、ブルーベック・カルテットならではのもの。冒頭の「Ode to a Cowboy」の米国のフォークソングを聴く様な軽快なフレーズが楽しい。実はこのアルバムの全8曲は、全てブルーベックのオリジナルである。ブルーベックの作曲による「米国の印象」。

聴いていて楽しい、聴いていて感じ入る、なかなかの内容のアルバムである。「米国の印象」というタイトルを抜きにしても、ブルーベックのオリジナル曲が魅力的な佳作である。このアルバムがなかなかリイシューされないのは不思議と言えば不思議。

日本には、ブルーベック・カルテットについて、聴かず嫌いのジャズ者が結構多くいるんじゃないかなあ。

 
 

大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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