僕にとっては初夏の雰囲気です。
一昨日の季節外れの冷え込みはどこへやら、今日は一気に夏の気配。思いっきり初夏な陽気になった。もはや長袖では暑いくらい。これだけ劇的に気候が変化すると身体がついていかない。特に、大きな手術を経た身体だけに不安はまだまだ残っている。慎重にならないと、と改めて心を戒める。
今日は、70年代のニューミュージックの話を。さて、この初夏たけなわの頃になると、聴きたくなるアルバムがある。渡辺真知子のデビューアルバム『海につれていって』(写真)である。このアルバムの、若く明るい溌剌とした雰囲気は、この初夏のシーズンにピッタリなのだ。潮騒の音が聞こえてくるようなインストゥルメンタル「海のテーマ」で始まる雰囲気は、僕にとっては初夏の雰囲気。
渡辺真知子は1977年のデビュー。当時のニューミュージックのシンガーソングライター(以下SSWと略す)としては珍しく、声楽出身ならではの正統な発声と豊かな声量が特徴で、歌謡曲の時代からの正統派歌手の流れを踏襲したもの。彼女の手なる曲についても、歌謡曲の時代から続く曲の展開を踏襲してはいるが、コード進行など、当時のニューミュージックでの新しい響きを取り入れ、洗練したもの。「故きを温ねて新しきを知る」的な曲作りは、他のSSWとは一線を画したものであった。
このデビューアルバムには、そんな渡辺真知子のSSWとしての個性が詰まっている。冒頭2曲目の「かもめが翔んだ日」などは、渡辺真知子の作曲の個性を実に良く表現している。従来の歌謡曲の展開よりも複雑なコード展開と、転調などを上手く使った曲作りは、歌謡曲の様でありながら、従来の歌謡曲よりは洗練された響きと洒落た雰囲気を持った独特な味わいがあった。
特にこの「かもめが翔んだ日」は、編曲の妙として、曲の頭のオーバーチュアが個性的で、このオーバーチュアの存在が、この曲のドラマチックな展開に大きく貢献している。スチールギターのピュンピュンというカモメの鳴き声を模した効果音をバックに、コードをグングン上げていって、いきなりボーカルが「ハーバーライトが朝日に変わる〜」と入ってくるところなどは、今聴いてもゾクゾクする。
この「かもめが翔んだ日」以降「片っぽ耳飾り」「愛情パズル」「私の展覧会」と続く、LP時代のA面は、渡辺真知子の作曲の個性をふんだんに味わわせてくれる。 歌謡曲の様で従来の歌謡曲では無い。洗練され垢抜けて「故きを温ねて新しきを知る」的な曲作り。コード展開とか、サビの部分での転調とか、独特なんですよね。
そして、LPのB面の1曲目を飾った「迷い道」。この曲を初めて聴いた時はビックリしました。その時は、まだ渡辺真知子の存在を知らない。喫茶店での有線放送でした。いや〜、歌詞も凄いんですが、作曲が凄い。歌謡曲の様で歌謡曲でない音の展開と響き。コード進行や転調の度合いは、当時、ニューミュージックと呼ばれた新しいJポップの流行を踏襲した新しいもの。思わず、誰だこれ、何だこの曲、と思いました。
この「迷い道」を冒頭に配したLP時代のB面もなかなかの展開。「なのにあいつ」「今は泣かせて」は失恋ソングとしてシットリした展開、そして「朝のメニュー」は、ちょっとコミカルで明るいフォーク調の佳作。そしてラストの締めの名曲「あなたの歌」。基本的に捨て曲無しの展開には、当時、単純に凄いな〜、と思いましたね。
ちょっぴり暗い失恋ソングもある内容ですが、やはり、冒頭の「海のテーマ〜海につれていって」の入りの部分の雰囲気から、海をテーマにした「かもめが翔んだ日」の雰囲気は「初夏」の雰囲気。初夏のキラキラした海を舞台に展開されるデビューアルバム『海につれていって』の世界。僕にとっては今の季節にピッタリです。
大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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