1966年『The Secret Sessions』
このボックス盤がリリースされた時は、よくまあこれだけのライブ音源が発掘されたもんだ、と感心したもんだった。
しかも、とあるファンがズタ袋の中に隠し持った小型テレコによって私的に録音されたものということで、驚きは倍増。よく正式盤としてリリースされたもんだ。
そのボックス盤とは、Bill Evans『The Secret Sessions : Recorded at the Village Vanguard 1966 - 1975』(写真左)。全104曲入りの8枚組ボックス盤。全ての音源はこのボックス盤によって初めて世に紹介された演奏ばかりである。
マイク・ハリス&エヴァリン・ハリス夫妻が私的に録音した音源なので、タイトルは『The Secret Sessions』。なるほどね。しかし、ファンの気持ちもここまでくると「執念」を感じるなあ。エヴァンスが同クラブに出演すると、週2回出かけてテープを回す。赴任先の西海岸からトンボ帰りをしてまで録音を続けたとか。
でも、この録音って、エバンスによって正式に認められた録音じゃないんですよね。つまりは違法録音。それでも、その内容の重要性に、エバンスの死後、エバンス財団が許可を出して、Milestones社長であるOrrin Keepknewsがリリースに踏み切ったという曰く付き。
しかし、小型テレコでの録音とは言え、UHER(ウーヘル)製の小型テレコでの録音なので、音は意外と良い状態なんですね。もっとチープな音質を想像していたので、この音質にはビックリしました。十分に鑑賞に耐えるレベルです。
さて、この『The Secret Sessions』を聴き直し始めました。今週は1966年の録音をまとめ聴き。まずは、1966年3月の録音。パーソネルは、Bill Evans (p), Teddy Kotick (b), Arnie Wise (ds)。
特に取り立てて特徴のあるトリオ演奏ではありません。平均的なビル・エバンス・トリオの演奏。テディ・コティックのベースも平均点。それでも、エバンスのピアノは端正なタッチで、エバンス節全快。エバンスのパフォーマンスの質は変わらないなあ、と妙に感心しました。
次のセッションは1966年7月3日。パーソネルは、Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Arnie Wise (ds)。ここで初めて、ベースにエディ・ゴメスが登場しますが、恐らく加入早々のトリオ演奏なんでしょう。まだ、ゴメスは後ろに引っ込んで控えめの演奏に終始しています。やはり、いかに優秀なベーシストとはいえ、慣れが必要なんだなあ、と変に感心してしまいます。
このBill Evans (p), Eddie Gomez (b), Arnie Wise (ds)のトリオ演奏が、10月21日、11月10日、11月12日と続きます。7月のセッションから3ヶ月経って、さすがゴメスはトリオに溶け込んで、ベース・ソロも堂々としてきました。まだ硬いところはありますが、この録音からは、ゴメスはエバンスとの相性が良いベーシストであることが判ります。
この1966年の5つのセッション聴き進めて、さすがビル・エバンスだなあ、と感心しました。演奏のレベルが変わらない。アドリブのイマージネーションも豊か。さすが超一流のジャズ・ピアニスト。端正なタッチ、エバンス節全快なアドリブ。
まあ、この演奏レベルであれば、天国のエバンスも、この『The Secret Sessions』のリリースを苦笑いしながら許してくれるのではないでしょうか。
大震災から3年2ヶ月。決して忘れない。まだ3年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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