ブルーベックの印象が変わります
僕はこのアルバムの存在を知らなかった。もともと、このジャズ・ピアニストは日本で人気が無い。特に、年配の評論家の皆さんに受けが悪い。あのマイルス・デイヴィスをして「あんなスイングしないピアニストはいない」と、けちょんけちょんである。
そのジャズ・ピアニストの名は「ディブ・ブルーベック(Dave Brubeck)。そして、そのブルーベックのソロ・ピアノ盤がある。そのソロ・ピアノ盤とは『Brubeck Plays Brubeck』(写真左)。1956年4月18〜19日の録音。ブルーベックの完全ソロ・ピアノ。
ピアノだけを聴くと、スイング感は希薄で、それでいて流麗な、流れる様なピアノのフレーズ。しかし、タッチは硬質でクラシックのタッチでは決して無い。あくまで、ジャズ畑のピアニストのタッチ。
加えて、ブルーベックのピアノは、前衛的なクラシックの様なピアノを応用しているので、流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングすることは出来ない。ブルーベックは、クラシックの4拍子の流れの様に、スクエアに「スイング」する。
アフリカン・アメリカンの流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングするのでは無く、ヨーロッパのクラシックの様に縦に揺れるように、オフビートにスイングする。この個性的で独特な「スイング感」をどう感じるかで、ディブ・ブルーベックに対する好き嫌いが決まるような気がする。
このソロ・ピアノ盤『Brubeck Plays Brubeck』は、そんなブルーベックのピアノの個性が満載。このソロ盤を聴けば、ブルーベックのピアノとは如何なるものかが良く判る。思いっきり、スクエアにスイングしている。
そして、面白いのは、スクエアなノリなのに、このソロ盤では、ブルーベックはなかなかにリリカルでロマンティック。流れる様な、美しいフレーズが意外と言えば意外。スクエアなノリを最小限の押さえながら、流麗なフレーズを紡ぎ出していくブルーベックは意外に繊細だ。
このブルーベックのソロ盤を聴くと、ブルーベックのピアノに対するネガティブな印象が揺らぐこと請け合い。ブルーベックのピアノはソロになると、流麗な美しい響きのピアノに早変わりする。タッチは硬質ではあるが適度なもので、心地良い硬さ。ビート感、スイング感が希薄なので、クラシック系のピアノ・ソロの様な、リリカルな雰囲気が強調される。
5曲目の「Weep No More」だけが、 Tom Adair / Dave Brubeck / Gordon Jenkins の共作で、残りの8曲は、Dave Brubeckのオリジナル。自らのピアノが映える自作曲をしっかりと用意して、自らのピアノをしっかりとアピールしている。さすが、作曲の才あるブルーベックである。
今やスタンダード曲となった「In Your Own Sweet Way」もブルーベックの曲で、なんと、このソロ・ピアノ盤『Brubeck Plays Brubeck』が、この曲の初出とのこと。へ〜知らなんだ。
僕はこのソロ・ピアノ盤『Brubeck Plays Brubeck』の存在を知らなかった。聴いてビックリ。このアルバムでの個性を鑑みれば、今までの日本でのブルーベックの評価は的外れなのがとても良く判る。
やはり、自分の耳で聴いて、自分で判断することがジャズでは大切、と再認識した次第。ジャズ・ピアノのマニアの方にお勧めのソロ盤です。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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