ブルーベックが歌伴を務めた盤
さて、今日もデイブ・ブルーベックの珍しい盤をご紹介しよう。デイブ・ブルーベックは、日本では評判が芳しく無い。スイングしないだの、ファンクネスを感じないだの、黒く無いだの、ジャズらしく無いだの、けちょんけちょんである(笑)。
何故、日本ではこんなに酷評に次ぐ酷評をされるのかが判らない。米国では、かなりの評価を得ている訳だから、日本でのこの評価の低さは何故だろう。僕には不思議でたまらない。
ちゃんと聴けば、デイブ・ブルーベックだって、一流のジャズ・ミュージシャン。悪かろう筈が無い。というか、2012年12月に、91歳で鬼籍に入るまで、約50年間、第一線で活躍できる筈が無い。デイブ・ブルーベックもしっかりとした個性を持った、優れたピアニストである。
スイング感は希薄で、それでいて流麗な、流れる様なピアノのフレーズ。しかし、タッチは硬質でクラシックのタッチでは決して無い。あくまで、ジャズ畑のピアニストのタッチ。ブルーベックは、クラシックの4拍子の流れの様に、スクエアに「スイング」する。
日本での評判の悪さ。ブルーベックにソロ・ピアノは無理だ、と言われたが、ブルーベックには『Brubeck Plays Brubeck』という優れたソロ・ピアノ作がある。それでは歌伴は無理だろう、と言われるが、確かに、スクエアに「スイング」するブルーベックには歌伴は無理かなあ。
と思っていたら、またまた、この歳になって、ブルーベックのこんなアルバムに出会った。なんと、デイブ・ブルーベックが歌伴をやっているのだ。
そのアルバムとは、The Dave Brubeck Quartet Featuring Jimmy Rushing『Brubeck & Rushing』(写真左)。1960年の録音になる。ちなみにパーソネルは、Jimmy Rushing (vo), Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。ジャズとブルースの大歌手ジミー・ラッシングが、デイヴ・ブルーベック・カルテットと共演したアルバム。
ルイ・アームストロングばりのダミ声だが、ウォームでソウルフルなラッシングのボーカルに、硬質なタッチでスイング感は希薄ではあるが、それでいて流麗な流れる様なブルーベックのピアノが良く合う。ソウルフルでブルージーな歌声に、リリカルなピアノやバップなピアノは似合わない。
合わせて、デスモンドのアルトも相性が良い。クールでウォームなデスモンドのアルトは、ラッシングのボーカルに相対するものであり、この対比もまた良い。
遅れたが、ジミー・ラッシングについて、簡単にご紹介しておこう。ジミー・ラッシングは1903年8月オクラホマで生まれ。30歳を過ぎて、カウント・ベイシー楽団に入団し、人気ボーカリストとなる。その後、独立し活躍を続け、1972年6月、68歳でこの世を去った。
このジミー・ラッシングの優れたボーカルは、このアルバムのハイライト。ブルーベックの優れた歌伴と、ラッシングのボーカルに相対するウォームなアルトの存在が、このアルバムを更に魅力的なものにしている。
ブルーベックのピアノが歌伴を務めるアルバムがあるとは知らなかった。しかも、魅力的な歌伴である。スクエアに「スイング」するブルーベックは歌伴も立派にこなす、優れたジャズ・ピアニストの一人であった。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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