ジャズ・ボーカル盤は歌伴に注目
春はジャズ・ボーカルを愛でるに相応しい季節なんだが、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ジャズ・ボーカルの選盤基準が、ちょっと他とは違う。
その我がバーチャル音楽喫茶『松和』のジャズ・ボーカル盤の選盤基準の一つが、ジャズ・ボーカルの伴奏者に注目して選ぶこと。特に、ピアニストに注目して、ジャズ・ボーカル盤を選盤することが多い。
例えば、昔から好きなボーカル盤の一枚がこれ。Oscar Peterson & Ella Fitzgerald『Ella & Oscar』(写真)。1975年5月、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Ella Fitzgerald (vo), Oscar Peterson (p), Ray Brown (b)。Pabloレーベルに残されたNorman Granzプロデュース作品。
Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)は、ビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーンと共に、女性ジャズ・ボーカリストの最高峰に位置する、不世出な存在である。愛称は「Lady Ella」または「The First Lady of Song」。彼女の歌は、どのアルバムでも聴けば判るが、素晴らしい歌声と素晴らしいテクニックを持ったもの。
しかし、僕はエラのバックで伴奏に徹するオスカー・ピーターソンに興味がいってしまう。オスカー・ピーターソンは、ジャズ・ピアノ史上、最高のテクニックの持ち主で、そのスインギーかつ高テクニックなフレーズは、他の追従を許さない。そのオーバー・スイング気味の圧倒的なアドリブ・フレーズは凄まじく、あまりの凄さに「スイングの権化」と揶揄されることもある。
女性ボーカリストの最高峰とジャズ・ピアノの最高峰との邂逅である。どちらも最高峰な二人なので、我が出て、なかなかまとまらないのではと危惧するが、これがそうならないのが、ジャズの面白いところ。それも、そのはず、このエラとピーターソンの二人は、1940年代後半から1950年前半に人気を博したJATP(Jazz at the Philharmonic)で、バッチリと共演しており、その相性は抜群なのだ。
この『Ella & Oscar』は、エラが58歳、ピーターソン50歳。ジャズ・ミュージシャンとしても成熟の域に達していて、それはそれは、粋でスインギーでジャジーな、これぞジャズ・ボーカルというパフォーマンスを聴かせてくれる。
ピーターソンは歌伴上手という評価があるが、確かにそれは言える。ピーターソンは、自らがリーダーのアルバムの時とは異なり、ジャズ・ボーカリストの共演の場合は徹底的に歌伴に徹する。音の大きさは、決してボーカリストの前に出ることは無い。テクニックについても、ボーカルを邪魔するような、高テクニックな弾きまくりは一切無い。
逆に、高テクニックなだけに、ボーカルの様々なシチュエーションに適応する。歌伴として、表現のバリエーションがかなり豊かであり、いかなるボーカル曲であれ、歌伴ピアノとして、ボーカリストを惹き立て、ボーカリストを徹底的に立てる。いや〜、とにかく、ピーターソンの歌伴は素晴らしい。
ピーターソンの素晴らしい歌伴を得て、エラはその才能と歌声、そしてテクニックのあらん限りを尽くして、アルバム全編に渡って唄いまくる。優れた歌伴によって、エラのボーカルの魅力が2倍にも3倍にも増幅されている。
歌伴あってのボーカル。歌伴が優れていれば、そのボーカル盤は2倍にも3倍にも、その魅力が膨らんでいく。
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私の一番好きなジャズボーカルアルバム。
全盛期の声は失ってしまったが、その枯れた味わいとキュートな歌い口は素晴らしい。
ピーターソンのピアノもエラに温かく寄り添い感動的。
しみじみとした大人のアルバムです。
投稿: okamoto | 2022年12月19日 (月曜日) 17時50分