開き直ったサンボーンのAOR盤
サンボーンのインタビューの中で、自分のアルバムがBGM的な聴き方、アクセサリー的な使われ方をされていることを告げられて、その話に対して、ちょっと憤りを感じた旨の話が出ていたが、確かに、サンボーンは悩んでいるし、嘆いてもいる。
しかし、サンボーン自身が憤ったところで、にわかにリスナーの習慣は変わらない。それでは、と開き直った様なサードアルバムが、David Sanborn『Promise Me the Moon』(写真左)。1977年の作品になる。
1977年と言えば、フュージョン・ジャズの全盛時代。フュージョン・ジャズの人気のピークに差し掛かった頃。ソフト&メロウ、ロック&ポップなジャズがヒット作を連発していた時代。やはり、ミュージシャンとして「売れたいなあ」と思ったら、時代に迎合するのも、これまた自然な成り行きと言える。
このサンボーンの『Promise Me the Moon』は、恐らく、サンボーンのアルバムの中で、一番、ポップな内容ではないか、と思っている。ボーカルをフィーチャーしつつ、サウンド的には、ロック&ポップな面を強めた、当時のフュージョン・ジャズのトレンドをしっかりと踏襲した内容になっています。
冒頭のタイトル曲の「Promise Me the Moon」なんか、もはやメインストリームなジャズから大きく離れて、乾いたファンクネスを湛えた、ロック&ポップでR&Bな演奏になっている。当時のハービー・ハンコックのファンク路線に似たお作法ではあるが、ファンクネスが希薄な分、サンボーン独特の個性が際立っている。「サンボーン印のAOR」とも表現できる演奏である。
グループ・サウンド的には、Hiram BullockのエレギとMark Eganのエレベが効いている。ロック&ポップな面を強めた、当時のフュージョン・ジャズのトレンドをしっかりと踏襲しているのは、このエレギとエレベの存在が大きい。というか、Hiram BullockのエレギとMark Eganのエレベだからこそ、ロック&ポップな面を強めたサウンドを実現していると言えます。
意外とサンボーン自身のアルトは、変わらないですけどね。相変わらず、硬派で意外と純ジャズな正統派アルトを聴かせてくれる。そして、これまた、意外とジャジーなのが、Victor Lewisのドラム。このドラムがそこはかとなくジャジー。この「そこはかとない」ジャジーなドラミングが、このアルバムをフュージョン・ジャズのジャンルに留めているのかもしれない。
開き直ったサンボーンのロック&ポップな面を強め、当時のフュージョン・ジャズのトレンドをしっかりと踏襲した、個性的な内容のアルバムだと思うんですが、意外とセールスは伸びなかった様です。ビルボードのジャズ・アルバムのチャートで27位が最高位でした。う〜ん、良いアルバムだと思うんですがねえ。
ボーカル入りの曲が半分を占める中で、このボーカル入りの曲が冒頭の「Promise Me the Moon」以外、キャッチャーな内容で無かったことが、セールス的には、ちょっと問題だったのかもしれません。
それと、アルバム・ジャケットを飾る、アフロ・ヘアのサンボーン。サンボーンにアフロは似合わない。このジャケットもセールス的には、ちょっと問題だったのかも知れません(笑)。
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ジャケット見てもわかるように、このころのサンボーンって、ルックスは毛深いし、ファッションもあまり気にしない、イケテナイ男だったんですよ。
今でこそ聴き慣れていますが、よくよく聴くとサンボーンの音って、ルックスどおりかなり暑苦しいと思いませんか?
STRAIGHT TO THE HEART (1984)あたりからでしょうか、眉細くして、ひげも脱毛?して、ヘアスタイルもファッションもこぎれいな感じになりましたね。ヴィジュアル作品作るし、金もできたんで、ちょうどいい機会だからスタイリストがついたんじゃないでしょうかね。
投稿: orubhatra | 2014年4月 8日 (火曜日) 21時45分