ピアノ・トリオの代表的名盤・40
ジャッキー・テラソンは、1965年11月、ドイツのベルリン生まれ。今年は49歳になって、中堅どころのポジションに位置するジャズ・ピアニストの一人である。彼のメジャー・デビュー作『Jacky Terrasson』は、1994年のリリースだから、今年はメジャーデビューして20年の節目の年になる。
1990年代から2000年前半にかけて、約1年に1枚のペースでリーダー作をリリースして、かなりの人気ぶりだったが、2000年半ば辺りから、そのリーダー作のリリースのペースが滞りがちになってきている。
まあ、リーダー作を出すだけが、ミュージシャンの価値では無いので、僕はあまり気にしないのだが、それでも、テラソンの新しいリーダー作が聴く頻度が少なくなるのは、ちょっと寂しい話ではある。
そんなジャッキー・テラソンのリーダー作の中で、僕が一番好きなアルバムがこれ。Jacky Terrasson『Smile』(写真左)。2002年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Jacky Terrasson (p), Sean Smith (ac-b), Eric Harland (ds), Remi Vignolo (el-b, tracks 2, 4, 5)。
テラソンのピアノの個性は「とにかく弾きまくる」。それもしっかりと旋律を歌わせながら、高速手捌きで弾きまくる。音の強弱を極端につけて、音の陰影とメリハリを付けてはいるが、音が小さくても、密度の高い硬質なタッチでしっかりと音を押さえていく。音の強弱に関わらず、硬度の高いタッチは、テラソンの個性。
このバリバリに弾きまくる様は、一言で表現すると「現代ジャズのバップ・ピアニスト」。テラソンのインプロビゼーションは、明らかに「ビ・バップ」な弾き回しである。高速な弾き回し、ダイナミックな展開、旋律を歌わせ、秀逸な疾走感。誤解を恐れずに言うと「旋律が美しく、メリハリの効いたバド・パウエル」の様な雰囲気。
そんな個性のテラソンではあるが、とにかく弾きまくるスタイルばかりではしんどい。まず、テラソン自身が疲れるだろう。メジャー・デビューして8年、この『Smile』では、テラソンも個性の幅を大きく広げている。
このアルバムでは、テラソンのもともとの個性である「とにかく弾きまくる」個性がメインではあるが、音の陰影、抑揚がダイナミックに付くようになっている。しかも、耽美派的な内省的な展開もあり、米国ルーツ・ミュージックをベースとした、フォーキーなフレーズや、ゴスペルチックなフレーズが加わった。
もともと、テラソンのリーダー作には、選曲の妙というものがあって、そのラインナップを見るとニヤリとしてしまうんだが、このアルバムでもそれがあって、とても楽しめる。主だったところでは「Smile」「Isn't She Lovely?」「Mo Better Blues」辺りかな。現代ジャズのバップ・ピアニストとしては「Nardis」「Autumn Leaves」「My Funny Valentine」などもユニーク。
デビュー当時は「弾きまくる」一辺倒で、それが個性で、それが魅力だった。が、8年経って「弾きまくる」から、演奏に幅が出て、フレーズにバリエーションが出て、表現に抑揚や陰影が豊かになって、とっても魅力的な、とっても素晴らしいピアニストになった。
テラソンのピアノの基本部分は「明るい」。その明るさがピッタリとフィットしている演奏が「Smile」。アレンジも良好、後半部分の米国ルーツ・ミュージックをベースとした、フォーキーなフレーズや、ゴスペルチックなフレーズが実に愛らしく、ポジティブ。
逆に「Isn't She Lovely?」は、ちょっと甘いR&Bの楽曲を、現代ジャズのバップ・ピアニストとして、完璧にビ・バップなアレンジでバリバリに弾きまくる。この「Isn't She Lovely?」は聴きものである。テラソンの個性の基本が良く判る。
バックでリズム&ビートを司るベース&ドラムも良好で、現代のピアノ・トリオとして、実に内容のあるアルバムだと思います。ジャケットもさり気なく硬派な面持ちで良い。テラソンのアルバムの中で、僕の長年のヘビロテ盤でもあります。
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松和のマスター様 こんばんは
多くの人と同様に
ジャズは後追いで定番から聴き始めました。
その後フュージョン辺りまでは時代を追ったのですが、
現代ジャズにまでは至らず
非常に情報に疎く、疎遠になってしまいました。
取り敢えず、おすすめのジャッキー・テラソンを聴いてみようと思います。
投稿: GAOHEWGII | 2014年4月 9日 (水曜日) 19時03分