ビッグバンド・ジャズは楽し・28
2014年4月19日のブログ(左をクリック)で、Gil Evansの『Out of the Cool』をご紹介した。今日は、その『Out of the Cool』と対を成すアルバム『Into The Hot』(写真左)をピックアップ。
『Into The Hot』は不思議なアルバム。構成としては、John Carisi(ジョン・キャリシ)のオーケストラとCecil Taylor(セシル・テイラー)のクインテット/セプテットの2つのユニットが、それぞれ3曲ずつ演奏し、それが交互に配置されている。収録曲でいうと以下の通りになる。
1. Moon Taj (John Carisi)
2. Pots (Cecil Taylor)
3. Angkor Wat (Carisi)
4. Bulbs (Taylor)
5. Barry's Tune (Carisi)
6. Mixed (Taylor)
1961年の録音なんだが、どうして、この様な構成になったのかが判らない。しかも、アルバムのオーナーであるギル・エバンスの役割と立ち位置が良く判らない。ネットでの情報を見ていても諸説紛々。「Supervised and Conducted by GIL EVANS」と書かれているものもある。つまり「監督&指揮」である。しかし、アルバムのクレジットにはアレンジ、プロデューサーとしてのギル・エバンスの名前は無い。
でも、1曲目から6曲目聴き通すと、しっかりとギル・エバンスのアレンジの響きがずっと漂っているのだから不思議。ジョン・キャリシのオーケストラのアレンジはジョン・キャリシの手になるものとクレジットされている。それでも、ユニゾンの音の重ね方や低音が豊かに響く楽器(トロンボーンなど)の採用など、ギル・エバンスの個性そのものの響きがする。
しかも、さらに面白いのが、セシル・テイラーのユニット。セシル・テイラーと言えば、フリー・ジャズのピアニスト。その自由でアブストラクトでありながら、演奏全体の構築美が素晴らしい、唯一無二なピアニスト。1961年の録音なので、演奏もかなりフリーキーで自由な演奏なんだが、まだ完全フリー・ジャズしている訳では無い。
かなり自由度の高いハードバップという感じの演奏なんだが、これまた不思議なことに、セシル・テイラーのユニットに演奏にも拘わらず、しっかりとギル・エバンスのアレンジの響きがずっと漂っているのだから不思議。アドリブを取る楽器を全面に押し出し、そのアドリブ・ラインを際立たせる。そんなギル・エバンスのアレンジの個性が感じられるから面白い。
ジョン・キャリシのオーケストラとセシル・テイラーのクインテット/セプテットの2つのユニットが、それぞれ3曲ずつ演奏し、それが交互に配置されているという、なんだか滅茶苦茶な構成なんだけど、これが全く違和感無く、一貫性のある演奏の流れになっている。これもまた不思議。
ジョン・キャリシのアレンジがギル・エバンスの影響を受けていることは明白であるけど、セシル・テイラーはどうなんだろう。このギル・エバンスとセシル・テイラーの関係を知りたいなあ。どういう関係で、このレコーディングに臨んだんだろう。
★大震災から3年1ヶ月。決して忘れない。まだ3年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 本田竹曠トリオのスタンダード集 | トップページ | 上手さ故のスタイルの宗旨替え »
こんにちは。
『ギル・エヴァンス 音楽的生涯』に、INTO THE HOTの事情が書いてあったと思います。図書館で借りて読んだだけで手元にないのでうろ覚えですが・・・
プロデューサーのクリード・テイラーがImpulseからVerveに移っちゃうので、そうすると義理もなくなるんだけど、もう1枚分の契約は残っている。だけど、やる気も曲もないので、お友達のCarisiに3曲頼んで、残りは当時興味があったCecil Taylorを無理やりねじ込んだ、と。こんな事情だったような気がします。
中身はCarisiとTaylorに丸投げで、ギルがやったことは、スタジオを押さえたのと、Cecil Taylor録音時にエンジニアがいらつくのをなだめただけだったそうですよ。
投稿: orubhatra | 2014年4月27日 (日曜日) 21時41分