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2014年4月17日 (木曜日)

1960年・過渡期のマイルス

過去にリリースされたらしいが、マイルス者の僕にとって、このライブ盤は「新譜」である。このライブ盤内容はブートに近い。
 
僕は基本的に「ブート」には手を出さない。手を出し始めたら「底なし」だし、当たり外れが大きいギャンブルに手を出すほど、資金的に豊かでは無い。こうやって、正式盤として発売されると入手し易くて良い。

そのライブ盤とは、Miles Davis『Manchester Concert - Complete 1960 Live At The Free Trade Hall』(写真左)。1960年9月27日、英国マンチェスターのThe Free Trade Hallでのライブ録音。なんだが、なぜかDisc2のボートラには、1963年5月29日、米国セントルイスのJazz Villaでのライブ音源が入っていて、ちょっと紛らわしい。

さて、それぞれのパーソネルを確認しておくと、英国マンチェスターのライブ音源は、Miles Davis (tp), Sonny Stitt (as,ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。米国セントルイスのライブ音源は、Miles Davis (tp), George Coleman (ts), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。音はあまり良くない。

1960年9月27日の演奏は、ジョン・コルトレーン脱退後、ソニー・スティットを加えてのクインテットでの欧州ツアーの演奏。ソニー・スティットのサックスが、かなり溌剌としていて元気だ。しかも、かなりのハイテクニックで飛ばしまくっている。ソニー・スティットって、こんなに速吹きだったけ、とビックリするほどである。

思わず「聴き易いシーツ・オブ・サウンド」だと思ってしまった(笑)。明らかに、前任のコルトレーンを意識している。でも、コルトレーンはモードだが、スティットはコード。コルトレーンを意識しているとは言え、スティットのサックスは、ハードバップ時代のコード奏法のコルトレーンに似ているが、コルトレーンよりシンプルでバリエーションに乏しい。

それでも、このライブ盤でのソニー・スティットは大健闘している。が、どうにもこうにも、シンプルでバリエーションに乏しいが故に、聴き続けていると飽きてくる。どの曲のどのアドリブ・フレーズも似通っている。このスティットのブロウを聴いていると、コードをベースとしたハードバップはマンネリズムに陥りやすい、ということが良く理解出来る。

逆に、マイルス御大は、何時になく絶好調。テクニック充実、ブロウ充実、ハイノートも難なくクリアし、ミストーンも無い。このライブ盤でのマイルスは絶好調。このライブ盤を聴くと、やはりマイルスは上手いと思う。やはりマイルスのトランペットの腕前は超一流だということを再認識する。
 

Miles_manchester

 
溌剌としたスティット、充実のマイルスに比べ、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブのリズム・セクションは、余り目立たない。やや平凡なリズム&ビートに終始する。覇気が無いというか、おきまりのリズム&ビートをなぞっている感じのリズム・セクションが惜しい。フロントの二人が吹きまくっているだけに、化学反応が起きなかったのは実に惜しい。

そして、Disc2のボートラ、1963年5月29日、米国セントルイスのJazz Villaでのライブ音源は、そのパーソネルを見ても判る様に、モーダルなマイルス・バンドの始まりを捉えたもの。それまでのコード奏法中心のハードバップとは、一線を画した、全く異なる雰囲気と演奏手法であることが凄く良く判る。

当時、従来のスタイルであった、スティット参加のコード奏法中心のハードバップと、最先端の奏法であったコールマン参加のモード奏法中心のコンテンポラリーな演奏と、その差は歴然である。比較して聴けば、コード奏法中心のハードバップは、早々にマンネリズムが訪れ、ちょっと平坦なメリハリの無い演奏に陥りがちで、聴き進めると徐々に退屈になってくる。

モード奏法中心のコンテンポラリーな演奏は、確かに、コード奏法中心のハードバップに比べて、バリエーション豊かで、変化に富み、アドリブの展開も拡がりがあるものなんだが、コールマンのフレーズがちょっと一本調子で、演奏全体に渡って変化に乏しいのが難点。さすがに、ハービー、ロン、トニーのリズム・セクションは、完全に新しい音を出し続けている。

最後にまとめると、このライブ盤、コード奏法中心のハードバップについては、どうにもこうにも、ちょっとマンネリズム漂う、意外性に乏しい、平板な演奏に終始していて、ちょっと残念。特に、マイルス御大が絶好調なだけに、この結果は惜しい。逆に、モード奏法中心のコンテンポラリーな演奏は、コールマンだけが浮いていて痛い。コールマンとマイルス、フロントの相性は良くない。

あまり評価が芳しくは無いですが、スティット参加の珍しいライブ音源として、絶好調のマイルスが聴けるライブ音源として、マイルス者ベテランの方は持っておいて損は無いでしょう。一般のジャズファンの方々には、敢えてお勧めすることはしません。正式盤にもっと優れたライブ盤が沢山あります。

 
 

大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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