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2014年3月11日 (火曜日)

聴いていて楽しいジャズ・ピアノ

エロル・ガーナーのピアノは、最初は全く判らんかった。彼のピアノは、ビ・バップ以降、バド・パウエルが確立した「モダン・ジャズ・ピアノ」の流れには全く乗っていない訳で、ということは、ガーナーのピアノは、ビ・バップ以降の「モダン・ジャズ」としての特徴を兼ね備えてはいない。

エロル・ガーナーの個性は、スイング・ジャズを踏まえたピアノだったり、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノであったり、スライド・ピアノであったりする。つまりは、モダン・ジャズの基となった、モダン・ジャズ以前の、モダン・ジャズの要素となった、ポップで大衆的なピアノの響きなのである。

そんな判り難い個性を、なんとか判り易く聴き分けることが出来るアルバムがある。Erroll Garner『The Most Happy Piano』(写真左)。1956年6月と9月の録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Al Hall (b), Specs Powell (ds)。ガーナー以外のベースとドラムは、僕には馴染みが全く無い。

「ビハインド・ザ・ビート」と呼ばれる独特のピアノ・スタイルが、エロル・ガーナーの売りなんだが、この『The Most Happy Piano』では、この「ビハインド・ザ・ビート」が良く判る。「ビハインド・ザ・ビート」とは、左手でビートを刻み、右手のメロディーが、左手のビートから若干遅れて出てくる弾き方。弾き方というか、エロル・ガーナーの場合は、自然発生的にこの弾き方になっている。これが、このアルバムでは良く判る。
 
 
The_most_happy_piano
 
 
その「ビハインド・ザ・ビート」を駆使しつつ、スイング・ジャズを踏まえたピアノや、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノや、スライド・ピアノを弾きまくる。遅れて出てくる右手のメロディーも、このアルバムでは、意外と端正に弾き進めていて、演奏全体が聴き易くなっている。いわゆる「ハッピー・スインガー」としてのエロル・ガーナーのピアノの個性が、とても良く判る。

エロル・ガーナーのお勧め盤としては、『Concert By The Sea』(2014年2月21日のブログ)や『Contrasts』(2011年6月16日のブログ)が挙げられることが多いが、意外とこの『The Most Happy Piano』がお勧めかもしれない。特に、ジャズ者初心者の方には、聴き易くて取っ付き易い内容となっています。
  
日本のジャズ・シーンでは、「バド・パウエル」がジャズ・ピアノの祖としてもてはやされており、「バド・パウエル」の影響を全く受けないエロル・ガーナーは「異端」とされた。技を主体とする「バド・パウエル」は正統であり、「聴かせる」エンタテインメントの「エロル・ガーナー」は異端とされた。

そんな異端のジャズ・ピアニストであるエロル・ガーナー。しかし、この『The Most Happy Piano』を聴けば、エロル・ガーナーのピアノは、エンタテインメント性の高い、聴いていて楽しいピアノ。難しいこと無しに、聴き流す感じで聴けば、違和感は全く感じることはありません。

ちなみに、このエロル・ガーナーって、あの俳優・映画監督のクリント・イーストウッドが最も愛するピアニストの一人だそうです。イーストウッドってジャズが好きなんでしょうね。渋いなあ。
 
 
 

大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

松和のマスター様
こんばんは

聴いてみました。
「ビハインド・ザ・ビート」という概念は知りませんでしたが、
意識するとよく分かりました。
録音の雰囲気も大衆酒場って感じで、
リラックスした感じが伝わりました。

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