春の季節の中で映えるウッズ
寒かった冬も去って、ようやく春らしい日が続くようになって、なぜか、アルト・サックスはフィル・ウッズに凝っている。
フィル・ウッズ(Phil Woods)は、1931年11月生まれ。伝説のチャーリー・パーカー直系のアルト・サックス奏者である。若い頃の経歴は華々しいものがあって、マンハッタン音楽学校やジュリアード音楽院で学んでいる。
そして、チャーリー・パーカーを心から敬愛し、なんとチャーリー・パーカー亡き後、未亡人であったチャンと結婚、パーカーの遺児二人の継父なった位で、これまた念が入っている。音的には、パーカーを判り易く、綺麗に整頓した様なアルトのフレーズが特徴。
アルトがよく鳴り、キューィと吹き上げつつ絞り上げるような金属的な音が個性的。テクニックが半端なく優れており、この耳につんざくような金属的な音を振りまきつつ、高テクニックで速いフレーズを吹きまくるので、若い時分は、ちょっと五月蠅いくらいのアドリブだった。本人はあまり意識していないようだが、ウッズのテクニックは凄まじいものがある。
ということで、フィル・ウッズのアルトを愛でるには、ウッズがちょっと歳をとった頃、歳をとってちょっと枯れた位の時期のアルトの方が聴く耳に優しい。ということで、僕はこのアルバムがずっとお気に入りでよく聴く。
そのアルバムとは、Phil Woods featuring Johnny Griffin『The Rev And I』(写真左)である。1998年11月、あのジャズ・レーベルの老舗、ブルーノートからの由緒あるリリースである。フィル・ウッズ初のブルーノート盤。アルバム・ジャケットを見ても、なんとなくブルーノートらしいのが嬉しい。
1998年1月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Phil Woods (as, el-p), Johnny Griffin (ts), Cedar Walton (p), Peter Washington (b), Ben Riley (drums), Bill Goodwin (per)。パーソネルを見渡しただけで、このアルバムは、なかなかの内容であることが想像出来る。
特に、ピアノのシダー・ウォルトンとドラムのベン・ライリー、そして、ベースのピーター・ワシントンのリズム・セクションは期待感満々である。そして、フロントを張るのは、ウッズのアルトとグリフィンのテナー。う〜ん、これは渋い。これはもう聴く前から堪らない(笑)。
1998年1月と言えば、ウッズは66歳。さすがに歳をとってちょっと枯れた味わいが出てくる時期である。しかし、ウッズの場合はちょっと違う。やっと出力80%、高テクニックで吹き過ぎでちょっと五月蠅いとされたウッズのアルトが、やっと、その「吹き過ぎ」が緩和され、高テクニックで雄弁なアルトという塩梅になった。とにかく五月蠅くは無くなった(笑)。
さすがにこのパーソネルである。アルバム全編に渡って快調な演奏が続く。ウッズとグリフィンのユニゾン&ハーモニーにはグッとくる。ウォルトンのピアノは端正で流麗、ワシントンのベースは堅調。ライリーのドラムは実にハードバップ風で、グッドウィンのパーカッションは粋。
選曲も渋くて、スタンダード曲も知る人ぞ知る的な曲が多く、それだけでもなかなかに楽しめる。ウッズの自作曲も好調。単なるハードバップ・ジャズの同窓会的な演奏で終わること無く、1998年の時代ならではの、コンテンポラリーなハードバップな一面を聴かせてくれるところが、前進するミュージシャン、フィル・ウッズとして頼もしい限りである。
溌剌としたウッズのアルトは、春の季節の中で更に映える。雄弁なアルトは実にポジティブ。年齢を積み重ね、ちょっと余裕をかました、出力80%な、少し緩やかなウッズのアルトは凄く格好良い。僕の隠れ愛聴盤。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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