キースの個性が希薄なピアノ・ソロ
今日の千葉県北西部地方は散々な天気でした。朝から雨模様。正午辺りから雨が強くなり、午後3時頃、雨が止んだと思ったら、今度は凄まじい西風。台風の様な暴風。夜になって、やっと安定してきました。
この風雨で桜は散らないだろうなあ、と心配しつつ、この急激な天候の変化に身体がついていかずに、午後から片頭痛に襲われ、ずっと午後は伏せっていました。一昨年の12月に手術して以降、気候の変化に敏感になったのか、気候が急激に変化する時に、必ず、酷い片頭痛に襲われます。困ったもんですが、仕方ありません。
ということで、今日の午後は床に伏せりながら、ジャズを聴くことに相成りました。音楽無しに昼間、寝ているのは寂しいので、中学時代から、必ず音楽をかけます。今日は片頭痛で苦しんでいることもあって、静かなピアノ・ソロ盤を聴きながら、片頭痛と闘うことにしました。
その静かなピアノ・ソロ盤とは、Keith Jarrett『The Melody at Night, with You』(写真左)。現代ジャズ・ピアノの重鎮、キース・ジャレット。彼が「慢性疲労症候群」という難病によってリタイアを余儀なくされたのが1996年の秋。3年余りの闘病の末、復活を遂げた訳ですが、その復活時、最初にリリースされたアルバムがこのピアノ・ソロ盤でした。
1998年12月の録音になります。キースのピアノ・ソロ盤は、ライブ録音がほとんどなのですが、このアルバムは自宅スタジオでの録音。ECMレーベルからのリリースですが、確かにピアノの響きがデッド気味でエコーも控えめ。いつものスタジオ録音では無いことは、容易に想像出来ます。
収録された曲を見渡すと、キースのピアノ・ソロ盤を聴き続けて来た者からすると、ちょっとビックリします。なんと、スタンダードとして有名なラヴソングばかり。解説によると、闘病生活を献身的に支えてくれた妻に捧げたピアノ・ソロ盤であるとのこと。なるほど、今までのキースのピアノ・ソロ盤とは、そのシチュエーションがちょっと違うのですね。
冒頭の「 I Loves You Porgy」から、ラストの「I'm Through With Love」まで、キースにしては、かなり内省的でシンプルな展開。キース独特のリズム&ビートは影を潜め、メリハリの効いたダイナミックな展開は全く聴くことは出来ない。どれもがスローなテンポで終始しており、仄かに沈鬱な雰囲気も底に漂う、静謐なピアノ・ソロ盤である。
ジャズのピアノ・ソロ盤というよりは、ピアノによる独白とでも形容した方がピッタリくる、語りかける様な、詩的な演奏です。クラシックのピアノ独奏に近い雰囲気とでも形容できるでしょうか。原曲のメロディーを忠実に展開し、ジャズ特有の原曲のコード進行を借用した独創的なインプロビゼーションが展開されるということは、このアルバムではほとんどありません。
キースの、キースらしからぬ、キースの個性が一番希薄なピアノ・ソロ盤だと感じています。キース独特のリズム&ビートは全く感じられず、淡々とただひたすら、綺麗な旋律だけが流れていく。キースお得意の「唸り」も無い。このピアノ・ソロ盤って、世間の人達から大絶賛されているんですよね。確かに美しいピアノ・ソロ盤ではあるので、それも当然のことかとも思います。
でも、キースの、キースらしからぬ、キースの個性が一番希薄なピアノ・ソロ盤が大絶賛されるって、なんか、キースを30年以上聴き続けてきたジャズ者にとってはちょっと複雑な想いがします。どうも、それまでのキースのピアノには無かった、内省的、内向的なパフォーマンスが、なんだかキースらしく無くて、どうにもいけません。
僕の中では、今でも、キースの、キースらしからぬ、キースの個性が一番希薄なピアノ・ソロ盤として、独特のポジションにいる不思議なアルバムの一枚です。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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