春から初夏にかけての高中正義
「夏だ、海だ、高中だ」という、今から思えば、えらく偏ったキャッチフレーズだと思うんだが、1970年代後半から1980年代にかけて、高中のギター・インストと言えば「夏」そして「海」、というイメージで押し通した。
確かに、高中正義の演奏って、季節をイメージすることが出来る、音の色彩が豊かなものが多いと思っています。恐らく、ギターの使い分け、ギターの音色の豊かさ、そして、表現力を支える高いテクニックが、それを可能としているんだと思います。
では、高中正義のギター・インストのアルバムの全てが「夏」御用達なのか、と言えば、僕としては「No」。例えば、この高中正義『T-WAVE』(写真左)については、僕にとっては「春」から「初夏」にかけてよく聴くアルバムなのだ。
さて、この『T-WAVE』というアルバムは、1980年6月のリリース。前年の1979年に、あのインスト名曲の「BLUE LAGOON」を収録した『JOLLY JIVE』をヒットさせ、続く『SUPER TAKANAKA LIVE !』を1980年3月にリリース。これまたヒットして、ギター・インストの雄として、高中正義の人気が定着した後、満を持してリリースしたスタジオ録音盤である。
冒頭の「EARLY BIRD」が、この『T-WAVE』というアルバムの雰囲気を代表している。今やアンティックとなった、アナログな目覚まし時計のベルが鳴り響き、イントロでピアノが気持ち良く響き、その後、高中のギターが滑り出てくる。ロックを基調としたインスト・ナンバーでありながら、雰囲気は実にポップ。聴き易くノリ易い。
そして、3曲目には、高中の専売特許となりつつあったマンボ・ナンバー『MANBO No.6』が炸裂する。思わず、口元が緩む。マンボ・ナンバーって、変にアレンジすると、思いっきり俗っぽくなってしまうんだが、高中はそこのところを上手くコントロールする。俗っぽくなる一歩手前で、ユーモアで包んで、小粋な展開に持ち込む。上手いなあ。
4曲目「CRYSTAL MEMORIES」やラストの「Le Premier Mars」は、当時、1980年の流行だった、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズなテイストのインスト・ナンバー。優れたアレンジもさることながら、高中のエレギが実に良い音を出している。この2曲は秀逸だ。非常に内容のあるフュージョン・ジャズなナンバーである。
「CRYSTAL MEMORIES」のイントロのヴォリューム・ペダルの使い方が上手い。思わず、顔を上げ目を見張る。「Le Premier Mars」の明らかにストラトの音が凄くクール。高中はギターの使い分けが上手い。確かに、この曲のフーレズはストラト向きだ。
僕にとって、この『T-WAVE』は、春から初夏にかけてのヘビロテ盤の一枚。恐らく、冒頭の「EARLY BIRD」と、この4曲目「CRYSTAL MEMORIES」やラストの「Le Premier Mars」のフュージョン・ジャズなテイストのインスト・ナンバーの存在が、僕の中で、春の雰囲気にピッタリと合うんだろうな。
アルバム・ジャケットのデザインは、あんまし良くないなあ(笑)。ハメコミで金髪外人美女にオープン・カー。趣味が悪いし、安直だ。このジャケット・デザインだけが問題だけど、このアルバムは、高中正義を代表する一枚だと思います。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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