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2014年3月 8日 (土曜日)

「ブラックホーク」総括

アコースティック・マイルスについては、1950年代と1960年代、それぞれの「黄金のクインテット」が誉れ高い。とりわけ、ハードバップというフォーマットに限って言うと、世間の評判は、1950年代「黄金のクインテット」にとどめを刺す、になる。

1950年代「黄金のクインテット」と言えば、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds) のクインテット。特に、ジョン・コルトレーンの参加が決定的要素である。コルトレーンが参加しているということで、 ハードバップのマイルスについては、この1950年代「黄金のクインテット」にとどめを刺す、ということになる。

しかし、そう言い切ってよいのかどうか。そんな疑問を強く感じさせてくれる、素晴らしいライブ音源がある。このライブ音源を聴くと、マイルスのハードバップは、1950年代「黄金のクインテット」は最高、とは言えないような気になる。

そのアルバムとは『In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk, Complete』(写真左)。1961年4月21,22日、サンフランシスコの名門クラブ、ブラックホークでのライブ音源です。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

もともとは『Miles Davis In Person, Volume 1 - Friday Night At The Blackhawk』と『Miles Davis In Person, Volume 2 - Saturday Night At The Blackhawk』の2枚のLPに分けて発売された音源。その元となったライブ音源の全てをCD4枚に収録した、実に魅力的なボックス盤です。

全て聴き通してみると、いや〜、素晴らしいハードバップ・マイルスですね。このCD4枚の音源を聴き通すと、マイルスのハードバップは、1950年代「黄金のクインテット」は最高、とは言えないような気になる。

1950年代の演奏よりも、アドリブ部において、イマージネーションの拡がりがあって、アドリブ・フレーズのバリエーションが豊かになっている。つまり、ハードバップ・マイルスは、1950年代「黄金のクインテット」よりも、ある部分で進化していた、ということである。

マイルスに合わないとか、萎縮しているとか、いろいろと揶揄されるハンク・モブレーのテナーですが、このライブ音源では頑張っています。コルトレーンと比べるから、話がややこしくなる訳で、コルトレーンとモブレー、それぞれ持ち味が全く異なるので、この二人のテナーを比較して、このブラックホークのライブ・パフォーマンスを論じること自体がナンセンス。
 

Miles_blackhawk

 
そして、このライブ音源で、一番のパフォーマンスを披露しているのは、ウィントン・ケリー。ここでのウイントン・ケリーのピアノは素晴らしい。ケリーのベストに近いのではないか。明快にハッピーに、コロコロとスインギーに展開するが、その底にそこはかとなくジャジー&ブルージーな翳りが漂うケリーのピアノ。このライブ盤の「ノリ」は、全て、ケリーのピアノに端を発する。

加えて、ベースのチェンバースとドラムのコブの、柔軟でバリエーション豊かなリズム&ビートが、1950年年代と比べて、明らかに進化した部分。ジャズ本などを紐解くと、不思議なことにあまり注目されていないのだが、このブラックホークでのチェンバースとコブのリズム&ビートは、ハードバップのフォーマットとしては、かなりプログレッシブで、かなりクールです。

シンプルに荒々しく突進する、こってこてハードバップなアコ・マイルス。モーダルな展開を封印して、徹頭徹尾、ハードバップな展開。コード奏法中心のアコ・マイルスの優れもの。コンプリート盤なので、良い部分も良くない部分も含めて、演奏の展開の全てが聴けてなかなか興味深い。収録時間が許す限り編集無しが基本でしょう。

確かに、アドリブ展開の部分で、なかなか気の利いたフレーズが出ずに、コンピングを繰り返したり、無駄なフレーズや意味不明なフレーズを垂れ流す部分もあります。しかし、それはそれで、素晴らしく個性的なアドリブ・フレーズを展開する前の「産みの苦しみ」であり、即興を旨とするジャズのライブ演奏においては必要不可欠なもの。決して削除してはならないものだと思います。

LP時代は仕方が無いでしょう。音質を考慮すれば片面約20分が限界。LP1枚、両面合わせて40分の短さでは、編集のハサミが入るのは仕方の無いことだと思います。でも、今はCDの時代。CD1枚にトータル74分程度の収録が出来るのであれば、ジャズのライブ音源はノーカットで収録すべきでしょう。編集が入るということは歴史に修正を加える、という感じがして、少なくとも僕は賛成できません。

マイルスの前では、モブレーもケリーも溌剌と一生懸命です。音の張り、輝きがちょっと違う。さすが、マイルス御大の前では、手が抜けないというか、格好良くやりたい、というか、そんな彼らの前向きな思いがライブ盤のプレイの中から伝わって来ます。

これまでの評論、評価を気にすること無く、自身の耳で聴き進めてみることをお勧めします。LP2枚のCD化の編集が入った音源よりは、ライブ・パフォーマンスをそのままCD化した、コンプリート盤が絶対にお勧めです。1961年当時のアコ・マイルスをそのまま追体験することできます。

 
 

大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
 
 

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