「スパニッシュ志向」なチック
チック・コリア(Chick Corea)は、スパニッシュ・テイストな音作りが個性。というか、チックはスパニッシュなジャズしかやらない、なんていう誤解に近い評価もあったりして、もっとちゃんとチックのアルバムを全部聴きなさい、ととある評論家には言いたくなる(笑)。
チック・コリアは、確かにスパニッシュ・テイストなジャズが得意ではある。が、徹頭徹尾、アルバムの頭から最後まで、スパニッシュ・テイストなジャズで通したアルバムは、実は数枚しか無い。アルバムに収録された何曲かはスパニッシュ・テイストなジャズなんてアルバムは沢山あるが、アルバム全体がスパニッシュ・テイストなジャズで満載なアルバムはなかなか無い。
先ずは『My Spanish Heart』(2011年2月6日のブログ・左をクリック)。1976年の作品。リリース当時LP2枚組のボリューム。1970年代中盤にリリースされた、コンテンポラリーなジャズ組曲なアルバム。タイトルから判る様に、チックの「スパニッシュ志向」を凝縮して、アルバムコンセプトとして、チックのコンポーザー&アレンジャーとしての才能を大いにふるった傑作アルバムである。
そして、2枚目が『Touchstone』(写真左)。1982年の作品。このアルバムもまた、徹頭徹尾「スパニッシュ志向」な内容で、1976年の『My Spanish Heart』の続編の様なアルバムである。とにかく、全ての曲でスパニッシュ・テイスト満載で、チック者にとっては堪らない内容。
当時のチックのレギュラーバンドに、ゲストとして、アコースティックギターとして、Paco de Lucia(パコ・デ・ルシア)、エレクトリックギターとして、Al Di Meola(アル・ディ・メオラ)を招聘しているところなんざあ、念が入っている。絶対にスパニッシュ・テイスト満載なアルバムを創るぞ、っていうチックの気合いが伝わって来る。
それから、チックが「これ」というアルバムを創るときには、絶対に招集されるベーシスト、Stanley Clarkeもしっかりと参加している。そして、Return To Foreverなリズム&ビートを供給しているのは、やはりゲストとして招聘された、Lenny White。チックの奥さん、Gayle Moranの幻想的なスキャットもしっかりと入っている。
この参加ミュージシャンの顔ぶれを見ただけでも、このアルバムは、絶対に「スパニッシュ志向」な内容で統一されるのでは、という期待感を大いに持たせてくれる。そして、この『Touchstone』を聴けば、その期待は裏切られることは無い。素晴らしいスパニッシュ・テイストなジャズが、徹頭徹尾、展開される。
やはり、アコギのパコ、エレギのディメオラが効いている。この二人にスパニッシュ・テイストなギターを弾かせたら、それはもう絶品である。『My Spanish Heart』では、バイオリンやチェロなど、クラシックな弦楽器が大活躍だったが、この『Touchstone』では、パコのアコギ、ディメオラのエレギが大活躍。スパニッシュ・テイストな音作りには、弦楽器は欠かせない。
良い雰囲気のスパニッシュ・ジャズです。チック・コリアの面目躍如。しかし、このアルバム以降、しばらくの間、チックは、アルバム全体がスパニッシュ・テイストなジャズで満載なアルバムを創ることは無かった。だから、チックはスパニッシュなジャズしかやらない、なんていうのは大いなる誤解なんですよね。気を付けて下さい(笑)。
大震災から3年。決して忘れない。まだ3年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。
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