ベニー・ゴルソンを見直した。
純ジャズもしっかり聴いている。最近、ちょっとサックスづいている。いろいろジャケットを見渡しながら、その内容を思い出しながら、なんだか雰囲気があいそうやなあ、と思うアルバムをピックアップして聴く。
このアルバムは、ジャケットが印象的なので良く覚えている。自画像のような前衛的な絵。これは誰のアルバムだろう。かなり尖ったミュージシャンのアルバムだろうと思いきや、それがまあ、このアルバムって、Benny Golson(ベニー・ゴルソン)のアルバムなんですね。
このアルバムは、Benny Golson『Free』(写真左)。1962年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Art Taylor (ds)。素晴らしいリズム・セクションである。この素晴らしいリズム・セクションをバックに、ベニー・ゴルソンがサックスを吹きまくる。
ベニー・ゴルソンって、今やテナー・サックスの大御所。1929年1月生まれだから85歳になる。まだ存命中。まだまだ現役である。ジャズメンって凄いよな。長生きのジャズメンって、現役で活躍し続ける人が多くて本当に感心する。
ベニー・ゴルソンと言えば、ファンキー・ジャズの演奏のアレンジとして、独特のユニゾン&ハーモニーの響きが特徴の「ゴルソン・ハーモニー」で有名。ゴルソンのアレンジの才は、ファンキー・ジャズのフォーマットで遺憾なく発揮されます。ちょっと聴けば、直ぐに「ゴルソン・ハーモニー」と判る。それだけ個性的なユニゾン&ハーモニーです。
では、ベニー・ゴルソンのテナー・サックスと言えば、あんまり評価が高くない。その茫洋としたフレーズの作り方、サックスの吹き出し方から、「ウネウネ・テナー」と揶揄され、締まりの無い、調子外れのよれよれテナーと揶揄されたりもする。確かに、そんな雰囲気はある。しかし、よくよく聴けば、しっかりと個性のある、味のあるテナーなんですよ、これが。
この『Free』では、そんなベニー・ゴルソンの硬派で個性的で、ちょっとハードなテナーが聴ける。確かに、このアルバムでの、ゴルソンのテナーは溌剌としている。溌剌としていて、しっかりとハードバップしている。意外とこのアルバムは、ゴルソンの代表作の一枚かもしれない。それほどまでに、ゴルソンのテナーは充実している。
タイトルは『Free』だが、内容はフリー・ジャズとは全く関係が無い。内容的には、しっかりとしたハードバップ。ファンキー・ジャズの雰囲気は控えめ。ゴルソンのワンホーン・カルテットなので、ゴルソン・ハーモニーはお預け。それでも、このカルテットの演奏は、充実し成熟したハードバップを聴かせてくれる。
冒頭のこってこてのラテン・ジャズ曲「Sock Cha Cha」のテーマ部で、ちょっと不安にはなる。しかし、アドリブ部に入ってのゴルソンのテナーは硬派で溌剌としていて、実に良い感じだ。バックのリズム・セクションが飛び抜けて優れているからだろう、とにかく、気合いを入れて、朗々と吹き続けるゴルソンは良い。
5曲目の「My Romance」のバラード・プレイも良い。緩まず、タイトに、ゴルソンはテナー吹き上げていく。バックのフラガナンのピアノも良い。伴奏のフラナガンの面目躍如。まだまだ若手若造のロンのベースも控えめで良い。そして、職人ドラマー、テイラーのリズム&ビートが、演奏の底をビシッと締めている。
良いアルバムです。ジャズ盤紹介には全く名前の挙がらないアルバムですが、これはゴルソンの代表作の一枚として、諸手を挙げてのお勧め盤です。ちょっと風変わりなジャケット、そして、誤解を招くようなタイトルに惑わされてはなりませぬ(笑)。
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コメント
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松和のマスター様
こんばんは
「My Romance」を聴いてみましたが、仰るとおり伴奏のピアノが素晴らしかったです。
甘いバラードですが、そのロマンティックなムードを全員で作り上げていて
心地よく聴けました。
ベニー・ゴルソンは、これまで他のリーダー作でここにも居るな、って感じで接していたのですがリーダー作も機会があれば聴いてみます。
投稿: GAOHEWGII | 2014年3月 5日 (水曜日) 18時46分
GAOHEWGII さん、こんばんは。松和のマスターです。
ね、なかなか良いでしょう、このゴルソンの『フリー』というアルバム。
ゴルソンのリーダー作は、1950年代のものより、意外と1980年代の
純ジャズ復古以降のリーダー作になかなか良いものがあったりします。
また、このブログでご紹介したいと思います。
投稿: 松和のマスター | 2014年3月 5日 (水曜日) 21時44分
こんにちは。通りすがりのものですが、
ゴルソンのワンホーンなら
TURNING POINT [Mercury] 1962
も良いですよ。私はこれでゴルソンを見直しました。
リズム・セクションは、Kelly+Chambers+Cobbの
当時のマイルス・リズム・セクションですから、
悪いはずありません。
あまり知られていないアルバムですが、ちょっと
もったいない。
ゴルソンのあのウネウネ・テナーは、Joe Hendersonや
George Adams、そしてMichael Breckerに影響を
与えているような気がするんですが、気のせいでしょうかね・・・。
投稿: orubhatra | 2014年3月 8日 (土曜日) 02時22分