ビル・エヴァンスの『Symbiosis』
昔、ジャケットに驚いて、一度は断念したアルバムである。それほど、このアルバムのジャケットは酷い。どうしたらこうなるのか、このジャケットをデザインした人、このデザインを採用した人に訊いてみたい。
Bill Evans 『Symbiosis』(写真左)。このジャケット・デザインは酷い。恐らく、ジャズのアルバム・ジャケットのワースト10に絶対入るであろう、そのケバさ、その趣味の悪さ。それでも、このアルバムは、かのモダン・ジャズ・ピアノの祖、ビル・エバンスのアルバムである。
しかも、このアルバム、タイトルは中身を語る。「Symbiosis」とは、和訳すると「共存、共生」。ビル・エバンスとオーケストラとの共演である。1974年2月の録音。ビル・エバンスは、オーケストラとの共演作を作りたくて仕方が無い。しかし、当時契約していたファンタジー・レコードには金が無い。でも、エバンスはどうしてもオーケストラとの共演作を作りたくて仕方が無い。
そんな予算的な問題をドイツのMPSレーベルが請け負うことになり、米国からは遠く離れた欧州からのリリースとなりました。ということで、このアルバム、商業的な成功には全く無縁だったそうです。でも、欧州のレーベルからのリリースが売れなかった理由じゃないでしょう。絶対にこのアルバム・ジャケットが原因だ(笑)。
しかし、内容はと言えば、それはそれは素晴らしいものです。オーケストラのアレンジは、クラウス・オガーマン。このオガーマンのアレンジが実に良く出来ている。エバンスのアコピ、エレピを全面に押し出し、エバンスの個性をしっかりと聴かせる、ジャズにおけるオーケストラの伴奏の王道を行く、古さを感じさせない、クールでお洒落なアレンジです。
そして、このオガーマンのオーケストラをバックに、ビル・エバンスが、アコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノの両方を上手く使い分けつつ弾きまくります。それはそれは、気持ちよさそうに、アグレッシブに弾きまくります。これだけ、流麗に抑揚を付けて弾きまくるエバンスも珍しい。よっぽど嬉しかったんでしょうね、オーケストラとの共演が・・・。
オーケストラに乗った、エバンスの演奏の基本は、勿論、エバンス・トリオ。ベースはエディ・ゴメス(Eddie Gomez)、ドラムは、マーティ・モレル(Marty Morell)。特に、このオーケストラの共演で素晴らしい演奏を聴かせてくれるのは、エバンスのエレピ。このアルバムでのエバンスのエレピは秀逸。
あまり語られることが無いのだが、エバンスのエレピは素晴らしい。エバンスは、アコピとエレピで、明らかに弾き方を変えている。特に、エレピについてはエレピ用の弾き方する。このエレピ用の弾き方が秀逸。エレピの響きを活かしつつ、アドリブ・フレーズが間延びしないような運指が素晴らしい。惚れ惚れする。
ジャケットにびびってはいけません(笑)。このアルバム、そのジャケット故に、セールス的にはあまり振るわず、廃盤状態になりがちなアルバムです。しかし、ビル・エバンス者には勿論のこと、ジャズ・ピアノ者の方々にも、是非とも聴いて頂きたいアルバムです。これほど、エレピ、アコピがテンション良く、心地良く響くアルバムはなかなかありませんぜ。
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