クラプトンの「大人のロック」
久し振りに、Eric Claptonの『Crossroads 2: Live in the Seventies』を聴きながら、そう言えば、このブログで、1970年代後半のクラプトンのアルバムについて語る機会があまり無かったことに気が付いた。
1970年代後半のクラプトンと言えば、まずは『Slowhand』(写真)だろう。1977年11月のリリース。僕は当時、浪人の身だったので、このアルバムを入手して聴いたのはリリース一年後のことであった。
まずジャケットが良い。若き日のクラプトンのニックネーム「スロー・ハンド」をタイトルにしたアルバムで、身開きのジャケットを開くと、当時のクラプトンの愛器であった「ブラッキー」がど真ん中にどーんと横たわっている。ジャケットをたたむと、ギターのネックの部分とクラプトンの左手だけが見えるという、なかなかのデザイン。
ジャケットが良ければ内容も良いのがアルバムというものである。この『Slowhand』というアルバムでは、クラプトンのギターの技というよりは、クラプトンのソング・ライティングの才能が思いっきり発揮されている。収録されたクラプトンの自作曲の全てが良い。逆に、このアルバムでは、クラプトンはギターをあまりギンギンに弾いてはいない。
このアルバムに収録された曲は、どれもがギンギンのロックな曲という雰囲気では無い。このアルバムがリリースされた1977年当時、ソフト&メロウなAORが流行し始めていた背景を思うと、この『Slowhand』は、クラプトン流のちょっと硬派なAORなアルバムと評しても良いかと思う。
そういう意味では、1970年代前半のクラプトンの「スワンプ」で「レイドバック」な音世界を期待すると、ちょっと「あれれ」と思ってしまうかもしれない。この『Slowhand』に収録された曲は、どれもが意外とソリッドで、意外とメリハリよく溌剌と演奏されていて、スワンプやレイドバックという雰囲気は微塵も感じられない。
スワンプの音を整理してスッキリさせて、ソフト&メロウな雰囲気とソリッドで硬質なアレンジで、コントラストを豊かにしたAORという風に僕は受け止めている。1970年代前半までのロックに求めたものを前提とすると、この『Slowhand』の音世界は、分別のある、大人のロックな雰囲気だと言える。
冒頭のJ.J.Cale作の「Cocaine」は、その歌詞、そのリフを聴くと、まだまだ従来のロックな雰囲気を漂わせているが、2曲目のバラード曲、当時の伴侶であったパティ・ボイドに捧げた、クラプトンの究極のラブ・ソングである「Wonderful Tonight」は、明らかに大人のロックであり、AORな音世界である。この「Wonderful Tonight」の歌世界を、1970年代前半までのロッカーは絶対に歌わない(笑)。
3曲目の「Lay Down Sally」も、1970年代半ばまでのクラプトンであれば、思い切りレイドバックした演奏でキメてくるのだが、このアルバムでは、ちょっとルーズさを漂わせながらも、意外とカッチリとソリッドにキメてくる。大人のちょっとハードなAORって感じで、クラプトンの音の変化が十分に感じられる。
『愛しのレイラ』や『461オーシャン・ブールバード』、『安息の地を求めて』と聴き込んできたクラプトン者の方々からすると、この『スローハンド』の音世界を聴くと、クラプトンも大人になったもんやなあ、と感じるのではないでしょうか。この『スローハンド』の音って、クラプトンの「大人のロック」ですね。
大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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