ジェイミーのメジャーデビュー盤
英国のヴォーカリスト&ピアニストJamie Cullum(ジェイミー・カラム)が来日しているんですね。東京・名古屋・大阪・広島・福岡でライブ公演の予定とのこと。日本でもジェイミー・カラムの人気が定着していることは喜ばしいことです。
僕がジェイミー・カラムの名を知ったのは2004年のこと。2003年に英国で発表した3rdアルバムにして、2004年米国・日本でもリリースされ、メジャーデビュー・アルバムとなった『Twentysomething』(写真左)が彼との出会いのアルバムです。
かの老舗のジャズ雑誌スイング・ジャーナルの「Jazz2004・完全データ・ブック」での、ジェイミー・カラムのこのアルバムのふれ込みタイトルが「ジャズ界のベッカム」。う〜ん、このふれ込みタイトルって、今見ても、俗っぽくて良いですねえ(笑)。
まあ、どこが「ジャズ界のベッカム」なのかはともかくとして、このボーカリスト、ジャズの領域からR&Bの領域まですっ飛んでいて、今時のジャズ男性ボーカルからすると、思いっきり時代にフィットしていて、なんだか凄く新しい雰囲気がして実に好ましい。
今時の男性ジャズ・ボーカリストは、シナトラの時代の「正統派男性ボーカル」を強く意識し踏襲するあまり、無難にまとめている割には面白味に欠け、聴き流す分にはまあまあの内容なのだが、しっかり耳を傾け、繰り返し聴くには単調なものが多い。つまりは、イージー・リスニング的なジャズ・ボーカルが多い、って感じている。
しかし、このジェイミー・カラムはちょっと違う。弾力性に富んだポップな雰囲気。しっかりハジケているんだけど、うるさく無い。しかも「しっとり」するところはしっかりと「しっとり」し、そのメリハリが心地よくて、気が付けばアルバム全曲聴き通してしまう。
そんな不思議な魅力を持ったボーカリスト。なかなかのピアノさばき、少し枯れかかった潤いある特徴のある声。過度にジャズジャズしていない、しっかりとした歌唱力。最近の男性ジャズ・ボーカリストの中ではイチ押しです。
アルバムの選曲を見てもユニーク。数々のスタンダードナンバーも彼流に取り込んでおり、「Singing inthe Rain」や「I Could Have Danced All Night」は映画音楽の不朽の名曲。これがなかなんですよね。かたや、Radioheadの「High and Dry」をはじめ、Jimi Hendrix、Jeff Buckleyの曲もカバっており、新旧織り交ぜた選曲はとても楽しい。
とにかく、このアルバムを聴いて、「選曲が正統派ジャズらしくない」とか「フュージョンっぽい」とか言う無かれ。ポップなノリと確かなテクニックが素晴らしい、新しい感覚の男性ジャズ・ボーカルとして大満足、大推薦ですね。
このメジャーデビュー作『Twentysomething』は、全世界で200万枚以上の大セールスを記録し、第47回グラミー賞ベスト・ジャズ・ヴォーカル部門にもノミネートされた。また映画『ブリジット・ジョーンズの日記〜きれそうなわたしの12か月』で、主題歌である「Everlasting Love」を唄った。昨年は「Save Your Soul」がトヨタ・アルファードのCM曲にもなりましたね。
僕は彼を評して「スニーカーを履いた、若きフランク・シナトラ」。聴きやすく、ジャズ者初心者からベテランまで、幅広くお勧めできるスタンダードな一枚です。
大震災から2年10ヶ月。決して忘れない。まだ2年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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