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2014年2月10日 (月曜日)

ローランド・カークを感じるには

この数年来、Roland Kirk(ローランド・カーク)のアルバムを探求している。ローランド・カークのプレイに度肝を抜かれたのが、『The Inflated Tear(溢れ出る涙)』というリーダー作を聴いた時。ジャズを聴き始めてから、約20年も経ってからのこと。21世紀になるほんの手前で、僕はやっとのことで、ローランド・カークにたどり着いた。

ローランド・カークは盲目のジャズメン。1935年か1936年の生まれ。1977年に鬼籍に入っている。僅か42年の生涯。ローランド・カークは「マルチ楽器奏者」。マルチリード奏者では無い「マルチ楽器奏者」。

一人で、サックス、フルート、トランペット、オーボエ、ピッコロなど、多種多様な管楽器が演奏可能。しかも、同時に数本のリード楽器を吹き回し、時に、鼻でフルートを鳴らしながらスキャットを口ずさみ、同時に手回しサイレンやホイッスルを鳴らす。

しかも、呼吸の間も絶え間なく、口から空気を吐き出すことによって、息継ぎの無音時間をなくす演奏技法である「循環呼吸」の実践者でもある。簡単に言うと「息継ぎ」が無い。ず〜っと吹き続けるという感じ。これが、カークの吹く音にとてつもない個性を与えているのだ。

この途方も無いカークの個性はどの辺りから顕著となったのか。彼の実質的なデビュー作、Roland Kirk『Introducing Roland Kirk』(写真左)を聴けば良く判る。
 
1960年6月、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Ira Sullivan (tp, ts), Roland Kirk (ts, manzello, stritch, whistle), William Burton (org, p), Donald Garrett (b), Sonny Brown (ds) 。カーク以外、ほとんど無名のローカル・ミュージシャンばかり。

しかし、この実質的なデビュー作『Introducing Roland Kirk』で、既にカークの個性は全開である。冒頭の「The Call」の演奏を聴くだけで、このローランド・カークというジャズメンは、途方も無い個性の持ち主であることが良く判る。他の類を見ない、途方も無い個性。音だけなので、どうやってこの不思議な響きを宿した「ユニゾン&ハーモニー」が奏でられるのかが判らない。
 

Introducing_roland_kirk

 
実にミステリアスな響き。ユーモラスでありながら、どこか悲しみを宿した様な、ブルージーな響き。肉声に近い、エモーショナルな響き。純ジャズ的なブルージーな響きというよりは、R&B、ソウル・ミュージック的なブラコン的な響きがポップでクール。
 
セロニアス・モンクにも通じる独特なタイム感覚。カークは、ジャズの歴史の中でも、途方も無く個性的なジャズメンなのだ。

セロニアス・モンクを「ジャズの高僧」と比喩するのであれば、ローランド・カークは「ジャズの虚無僧」と喩えたい。複数本のサックスを同時にエモーショナルに吹き鳴らしている時も、その音の底にブラコン的な響きやソウル・ミュージック的な響きが感じられるところが、ちょっと俗世間っぽくて、なんとなく「虚無僧」って感じなんですよね〜。

しかしながら、3つの管楽器を首の周りに巻きつけ、3つの管楽器を同時に加えて吹き、さらにフルートやホイッスルなど様々な楽器を身体にまとわりつかせて演奏する写真を見て、日本では「グロテスク・ジャズ」と紹介されていた時期がある。

なんと悲しいことだろう。真っ先にカークの音を正しく評価することなく、その「マルチ楽器奏者」として演奏する姿・形を見て、グロテスク・ジャズと形容した、当時のジャズ者の方々の感性を悲しく思う。

ローランド・カークは、音的に正統なジャズを踏襲し、メンストリーム・ジャズ的な音を旨とし、テクニックのレベルは高い。純ジャズとして評価されるべき、硬派でクールなジャズである。決して「ゲテモノ的」なジャズでは全く無い。もっと、ローランド・カークのリーダー作に耳を傾け、その途方も無い個性を体感していただきたい。

やはり、ローランド・カークを感じるには、この実質的なデビュー作である『Introducing Roland Kirk』を聴くのが良い。カークを探求するには、この『Introducing Roland Kirk』から順番に一枚一枚、リーダー作を辿っていくのが正攻法だろう。これからのローランド・カークの探求はとても楽しみだ。

 
 

大震災から2年10ヶ月。決して忘れない。まだ2年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

おひさしぶりです。  
ローランドカークのライブ映像が半年ばかり前にCSでやってました。  
見ると2本のサックスを片手でもう一本を残る片手でみごとに運指して
ハーモニーを出しているさまがよくわかります。 
ソプラノ(改造してマンゼロ) 直管のアルト(ストリッチ)など
はテナー(これはあまり変えられていないよう)との3本同時演奏の
ための改造でしょう。 
音だけを聞いていると まともな優れた演奏で マスターがおっしゃるように 
決して曲芸ではなく自分の音楽的必然性でやっているのもみてとれます。  
だけど フルートがテナーのベルの中にいれてあるのはちょっと 
おいおいと突っ込みたくなりました。 

こんにちは、杢さん。松和のマスターです。
 
私も以前、ローランド・カークの演奏を映像で見る機会があって、
2本のサックスを片手で、もう一本を残る片手で操ってハーモニー
を出している様を見て、度肝を抜かれました。

なるほど、ローランド・カークはこうやって、あの個性的な
リード楽器のユニゾン&ハーモニーを出しているのだと、
合点がいったことを覚えています。いや〜、ジャズの世界は広いな、
なんでもありやなあ〜、と妙に感心しました。

しかし、音的に正統なジャズを踏襲し、メンストリーム・
ジャズ的な音を旨とし、テクニックのレベルは高い。凄いぞ、
これは、と思いました。
 

松和のマスター様
こんばんは

最近、後期作品が一気に日本盤でCD化されましたよね。
聴くにはいいタイミングだと思います。

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