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2014年2月23日 (日曜日)

いきなり純ジャズ化したPMG

1995年のリリースの『We Live Here』は、Pat Metheny Group(PMG)のスムース・ジャズ化のアルバムであった。このアルバムを聴いた時、実は「PMGは終わったな」と思った。リズム・ループを採用して、音の要素・音の作りとして、ジャズ・バンドがリズム&ビートを二の次にするなんてあり得ない。

と、前のブログで書いた。そう、僕はこの『We Live Here』で、PMGは終わったと思った。もうPMGに手を出すことも無いだろうとも思った。しかし、そこはマニアの悲しいところ。PMGの新譜が出たら出たで、やっぱり入手して聴きたくなる。

1996年リリースの『Quartet』(写真左)。前作同様、リズム・ループを採用した、単純なリズム&ビートをバックとしたスムース・ジャズ的な雰囲気のアルバムなんだろうな、とあまり期待せずに、CDプレイヤーのトレイに載せた。スタート・スイッチを押す。

出てきた音に「ひっくり返った」(笑)。冒頭の「Introduction」の音を聴いてビックリ。コンテンポラリーな純ジャズな音である。あれれ、前作のあのスムース・ジャズ化したPMGの音はどこへ行ったのか。さすがはPMG。この『Quartet』では、いきなり軌道修正し、硬派なコンテンポラリー・ジャズへと返り咲いたのであった。

続く「When We Were Free」も、実に良い感じのコンテンポラリーな純ジャズな音。アルバム・タイトル通りのカルテットの、実に硬派な純ジャズが展開される。さすがPMG。ライル・メイズのピアノのバッキングを実に趣味が良く、その上にパット・メセニーのギターが個性豊かに響き渡る。
 

Pmg_quartet

 
しかし、7曲目の「Dismantling Utopia」辺りから、ちょっと怪しくなる。まず、この「Dismantling Utopia」は、ほとんど前衛音楽な内容の演奏になっている。リズム&ビートの無い、楽器の音の響きと音の間を活かした現代音楽的な響き。

ううう、これは、パットの別の個性、前衛的でアブストラクトでフリーキーな側面をPMGに持ち込んできたのではないか。12曲目の「Glacier」まで、6曲もの間、前衛的でアブストラクトでフリーキーな演奏が繰り広げられる。これは、PMGとしては新境地ではある。しかし、いきなりここまでしなくても、とも思ってしまう。

ラストの3曲「Language of Time」「Sometimes I See」「As I Am」も、全曲までの極端に前衛的でアブストラクトでフリーキーな演奏では無いにしろ、かなり硬派で、ややフリー寄りのコンテンポラリーな純ジャズが繰り広げられる。寛いで聴き流せる内容では無い。しっかりと聴き込むべく、演奏と対峙する姿勢が求められるレベルである。

いや〜、ここまで極端に純ジャズ化するとはなあ。それまでのアフリカン・ネイティブでアーシーでフォーキーな雰囲気はほとんど無くなって、前衛音楽的な雰囲気も織り交ぜた、コンテンポラリーな純ジャズな音のみになった。このPMGの変化が良かったのか、悪かったのか、次作以降の展開にその判断は委ねられた。

 
 

大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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