« いきなり純ジャズ化したPMG | トップページ | ピアノ・トリオの代表的名盤・39 »

2014年2月24日 (月曜日)

モントルーのマイルス・1989年

1989年7月21日、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのエレ・マイルスである。マイルスが鬼籍に入るのは、1991年9月28日なので、鬼籍に入る2年2ヶ月前のライブ音源になる。

1986年のリリースの傑作『Tutu』のサウンドをジックリと煮詰めていって、この1989年で、ほぼ完成の域に至っていると思えるくらい、充実した破綻の無い、非常に良くアレンジされ、しっかりと練習を積んだ、素晴らしい演奏が繰り広げられている。

音的な印象は「ポップ&ダンサブル」。マイルスが『オン・ザ・コーナー』から追求してきた、ストリート・ミュージックとしての「ポップ&ダンサフル」なリズム&ビート。第二期エレ・マイルスは、ここに来て、その適度な軽さ、しなやかさを具備して、爽快で躍動感のあるリズム&ビートを獲得した。

ちなみに、そのパーソネルはと言えば、Miles Davis (tp, key), Rick Margitza (ts), Kei Akagi, Adam Holzman (key, synth), Joe "Foley" McCreary (b), Benny Rietveld (b), Ricky Wellman (ds), Munyungo Jackson (per), Chaka Khan (vo)。

楽器構成としては「エレギ」が無くなった。完全に『Tutu』の音をライブで追求した結果、エレギがシンセにとって代わった。しかも、シンセは、ケイ赤城とアダム・ホルツマンの2台構成。シンセのユニゾン&ハーモニ−。旋律を司る音がぶ厚く、色彩豊かになった。そういう変化が「ポップ&ダンサブル」な雰囲気に直結しているのだろう。
 

Miles_montreux_1989

 
しかもビックリしたのが、チャカ・カーンのボーカル。それまで、マイルスは決してボーカルを入れなかった。コーラスだって入れない。そんなマイルスが、モントルー・ジャズ・フェスティバルという特別な環境ということもあったんだろうが、チャカ・カーンをボーカルに起用して、「Human Nature」を熱唱させている。

聴衆は大喜び。マイルスも笑っているようだ。モントルーの聴衆に対するファン・サービス。マイルスも柔らかくなったもんやなあ。第一期エレ・マイルスの頃は、下を向いてペットを吹いたり、後ろを向いてペットを吹いたり、とにかく、聴衆に迎合することなどは全く無縁。孤高のジャズの帝王って感じだったんだが、60歳を過ぎて、マイルスも丸くなったなあ、と嬉しくなったりする。

第二期エレ・マイルスの成熟が聴いてとれる、聴いて楽しい、1989年のモントルーのエレ・マイルスである。マイルスのキーボードでの指示がでれば、バンドの音、バンドのリズム&ビートが、スッと変わって、スッと決まる。恐らく、マイルスの思い通りの音が出ているのではないか。

マイルスのトランペットも、当時63歳とは思えないほど、張りのある、テクニカルな演奏を聴かせてくれる。オープンもミュートも、ほとんどミストーンの無い、テクニック的にもしっかりと運指した、充実したマイルスを聴くことが出来る。この時のモントルーの聴衆は、この後、2年2ヶ月で鬼籍に入るなど、全く想像出来なかっただろうな。
 
 
 
★大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« いきなり純ジャズ化したPMG | トップページ | ピアノ・トリオの代表的名盤・39 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モントルーのマイルス・1989年:

« いきなり純ジャズ化したPMG | トップページ | ピアノ・トリオの代表的名盤・39 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー