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2014年1月 4日 (土曜日)

今年の聴き始め・純ジャズ編

今年の個人的なテーマは「初心に帰ろう」。さて、私こと、バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターの純ジャズのアルバム・コレクションの初心って何だったのか、と振り返って見ると、このアルバムが真っ先に思い浮かぶ。

純ジャズの世界では、やはりこのアルバムやなあ。Bill Evans『Portrait in Jazz』(写真左)。ビル・エバンスの名盤中の名盤。現代のピアノ・トリオの演奏展開を決定付けたアルバムである。

ビル・エバンスのこのピアノ・トリオの以前と以降のそれぞれの演奏展開を聴き比べてみると判る。ビル・エバンスのピアノ・トリオは、ピアノ、ベース、ドラムの演奏が同等の立場で繰り広げられている。これが「ミソ」。

とりわけ、ベースの演奏が実に特徴的で、それまでのベース奏法のスタンダードであった、ビートをキープする、所謂「ウォーキング・ベース」なる奏法を採用していない。ピアノと同等の立場で、ピアノのインプロビゼーションに絡むように、創造的で柔軟なインプロビゼーションを展開する。

それまでのピアノ・トリオの演奏展開と言えば、あくまでピアノが主役。ピアノが創造的で柔軟なインプロビゼーションを展開する傍らで、ベースとドラムはあくまで「リズム&ビート」をキープする役割。ソロを渡されても、ベースとドラムはあくまで「リズム&ビート」をキープしながらのアドリブ展開に終始する。

が、このビル・エバンスのトリオは違った。確かに、ベースとドラムは「リズム&ビート」をキープはしている。が、明確な「拍」を入れずに「間」を活かした、スペーシーなインプロビゼーションをベースに「リズム&ビート」をキープしているところが新しい。
 

Portrait_in_jazz_2

 
そして、ビル・エバンスのピアノは、そんなリズム・セクションの「リズム&ビート」をキープをベースに、自由度と柔軟性の高いインプロビゼーションを展開している。明らかに、それまでのピアノ・トリオの演奏展開とは異なる、モダンでクール、そして、実にアーティスティックな響きは、このアルバムを聴けば、直ぐに判る。

実はジャズを聴き始めて、ハードバップ時代のピアノ・トリオを聴くにつけ、ベースとドラムはあくまで「リズム&ビート」をキープする役割に留まり、ピアノだけが創造的で柔軟なインプロビゼーションを展開する、という画一的な演奏展開がつまらない、と感じた。これでは、ジャズは創造的とは言い難い、と感じた矢先での、この『Portrait in Jazz』との出会いだった。

このアルバムを聴き終えて、これは何だ、と感じた。ジャズの最大の特徴のひとつである「自由なインプロビゼーション」というものを初めて感じた気がした。初めて、ジャズが創造的な音楽ジャンルだ、ということを感じた瞬間だったような気がする。

今を去ること35年前の出来事である。当時、僕は二十歳。このBill Evans『Portrait in Jazz』というアルバムに出会って、ジャズは面白い、ジャズは聴き込むに足る音楽ジャンルだ、ということを思いっきり感じた。そして35年間、ジャズのアルバム・コレクションにドップリ浸かり、未だその「音の迷宮」を彷徨っている(笑)。

つまりは、このBill Evans『Portrait in Jazz』ってアルバム、僕にとっては、ちょっとだけ罪作りなアルバムである、ってこと(笑)。今年もよろしくお願いいたします。

 
 

大震災から2年9ヶ月。決して忘れない。まだ2年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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