リズム&ビートに違和感が惜しい
ふうむ、どうもこのアルバムは苦手やなあ。何かしながらのBGMには良いんだが、しっかりと聴き込むと、どうしても違和感が付きまとう。アルバムの出来は素晴らしく良い。それでも、何か違う。僕にとって、長年、そんな微妙な感覚が付きまとうアルバムである。
そのアルバムとは、Pat Metheny Group『Letter From Home』(写真左)。1989年春、ニューヨーク、パワーステーションでの録音。Pat Metheny Group(以降PMGと略す)としては、1987年の大傑作『Still Life (Talking)』以来のアルバム。
冒頭の「Have You Heard」聴くと、前作『Still Life (Talking)』の音作りを踏襲している様で、ググッと期待感が高まるのだが、リズム隊のリズム&ビートが全面に出てくると、僕はどうしても「オヨヨ」となってしまう。リズム&ビートに違和感を感じてしまうのだ。
PMGの Steve Rodby (b), Paul Wartico (ds) のリズム隊。当然、人間がリズム&ビートを叩きだしている訳だが、このアルバムのリズム&ビートを聴いていると、リズム・ボックスの様な、シーケンサーの様な、実にデジタルチックなリズム&ビートの様に聴こえてしまうのだ。
録音された時代が「1989年」なので、録音もデジタル録音なんだろうし、リズム&ビートがデジタルチックな分、どうも耳にしっくりこない。デジタルチックなリズム&ビートをバックに、パットのギターとメイズのキーボードだけがやけに前に出て、キャッチャーなフレーズを奏でまくる。なんだかグループ・サウンドって感じが希薄なのだ。
でも、アルバム全体の出来は良いんですよ。非常に良く作り込まれていると思います。ちょっと作り込まれ過ぎかな、とも思いますが。収録された曲もバラエティに富んでいるのですが、ちょっと計算され過ぎているかな、とも思います。
それともう一つの違和感がボーカル。『Still Life (Talking)』の時は、Mark Ledford, David Blamiresという二人のボーカリストで、アフリカン・ネイティブでアーシーでフォーキーな、実に印象的なボーカルだった。
今回の『Letter From Home』では、Pedro Aznarが帰ってきたんだが、このPedro Aznarのボーカルが、確かにアフリカン・ネイティブでアーシーではあるだが、『Still Life (Talking)』の二人に比べると「アーバン」なのだ。洗練されている、とも言える。
アルバムの出来は良い。洗練されているし、良く作り込まれている。でも、デジタルチックなリズム&ビートと相まって、どうしても、違和感を感じてしまうのだ。
キャッチャーで耳当たりの良いフレーズやメロディーが満載なので、何かしながらのBGMには良いんですが、しっかりと聴き込むと、どうしても、僕は未だに、このデジタルチックなリズム&ビートに馴染みません。
やはり、ジャズは「リズム&ビート」が肝であり命。『Letter From Home』を聴く度に、このマイルスの名言が心に沁みる気がします。
大震災から2年10ヶ月。決して忘れない。まだ2年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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