最近のトラックバック

« 名演を引き出した「若き才能」 | トップページ | ビッグバンド・ジャズは楽し・24 »

2014年1月 7日 (火曜日)

ロックで即興演奏はあるのか

インプロビゼーション、いわゆる「即興演奏」はジャズの最大の特徴。おきまりのテーマ部から、インプロビゼーション部へなだれ込み、延々と繰り広げられる即興演奏は「ジャズの花」である。

では、ロックの世界で、インプロビゼーションはあるのか。これが殆ど無い。もともと、ロックは大衆音楽。誰が聴いても判り易くてはならない。そんな条件が付いている中で、毎回毎回、音の展開、節回し、アプローチが異なる即興演奏は判り難くて「いけない」。

ロックは、皆が判り易く、皆が一様に乗れるものでなければならないので、即興とは反対の、お決まりのキャッチャーで定型的な展開やアプローチが必要となる。毎回毎回、お約束の「お決まりの展開」が来るからこそ、乗れるし、毎回毎回、一様に楽しめる。

しかし、1960年代後半から1970年代前半の英国では、そのロックとジャズの境界線が曖昧で、特に、プログレッシブ・ロックと呼ばれるジャンルに属するバンドで、即興演奏を得意とするバンドが幾つかいた。メジャーなところでは、キング・クリムゾン、ソフトマシーンなどがそうだ。

そして、キング・クリムゾンなどは、2009年、ドラムのビル・ブルーフォードが現役引退を表明するまで、長きに渡って、ロック・バンドらしからぬ、即興演奏を得意とした、独特な個性を持つプログレッシブ・ロック・バンドとして君臨した。
 
21世紀なって振り返ると、キング・クリムゾンほど、即興演奏を売りにしたロック・バンドは無い。1970年代以降、21世紀なるまで生き残ったロック・バンドの中では「唯一」と言って良い。

そんなキング・クリムゾンの即興演奏が楽しめるアルバム・シリーズがある。1997年から1999年に渡って展開された「ProjeKcts(プロジェクツ)」である。Projectという単語の「e」と「c」との間に大文字のKが入っているところが「ミソ」。「Kc」とはキング・クリムゾンのイニシャル。なかなかお洒落なバンド名である。

「ProjeKcts」とは、キング・クリムゾンのメンバーが行った、実験プロジェクトの名称。1997年から1999年に渡って展開された「ProjeKcts」は、OneからFourまで、4つのユニットが存在する。
 

Projekct_one

 
1996年、キング・クリムゾンの内紛によって、ダブル・トリオ期のメンバー中心に編成された、実験の要素の強いテンポラリー・バンドであった。「ProjeKcts」の演奏は、即興演奏をメインとする。よって、アルバムの殆どがライブ盤である。

例えば『ProjeKct One』(写真左)を聴いてみると、その即興演奏の内容の濃さが良く判る。曲名は例えば「4 i 1」とか「2 ii 3」とか、おちょくっているとしか思えない、記号のようなものばかりなので、意味を成さない。このアルバムの内容の全てが、キング・クリムゾンの主要メンバーによる、エレクトリックな即興演奏である。

特に、エレギのロバート・フィリップ翁(写真右)の演奏が凄い。暴力的であり、メタリックであり、アブストラクトであり、フリーであり、モーダルである。
 
このエレギの即興演奏は「マイルスもビックリ」だろう。そう、この『ProjeKct One』のエレクトリックな即興演奏は、そこはかとなく「エレクトリック・マイルス」の雰囲気が漂っている。

変則拍子を基本に、ポリリズムを叩きまくるビル・ブルーフォードのドラミングも、かなりエレクトリック・ジャズ的だ。ジャジーな雰囲気が殆ど皆無なのと、リズム&ビートに黒っぽさが無い分、ジャズ的な雰囲気は希薄だが、演奏内容は、そのテクニックと共に、先進的なエレクトリック・ジャズに匹敵する。

この『ProjeKct One』は、エレクトリック・ジャズ者もビックリ。ほとんど、エレクトリック・マイルス、ほとんど、エレクトリック・ジャズである。まあ、一部の演奏は「これって、Larks' Tongues in Aspic Part.2 のままやん」と思わず突っ込みたくなるものもあるが、これはこれで、キング・クリムゾン者としては、胸にグッとくる(笑)。

21世紀に入って、ロックのメジャーどころでは、ほとんど姿を見なくなった「即興演奏を得意とするバンド」。しかも、その演奏内容、テクニック共に、先進的なエレクトリック・ジャズに匹敵するバンドは、ほとんど見当たらなくなった。しかし、どうも、このキング・クリムゾン、今度はトリプル・ドラムをベースに復活するらしい。楽しみである。

 
 

大震災から2年9ヶ月。決して忘れない。まだ2年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

« 名演を引き出した「若き才能」 | トップページ | ビッグバンド・ジャズは楽し・24 »

コメント

松和のマスター様

こんばんは

このプロジェクツ・シリーズは過去にトライして
挫折した経験があります。

そうなんですよね。凄いはずなんですよね。
もう一度聴いてみます。

こんばんは、GAOHEWGIIさん。松和のマスターです。
コメントありがとうございます。
 
このProjeKctシリーズ、エレクトリック・ジャズの耳で
聴くと、意外と聴き通せます。逆にロックの耳で聴くと、
ちょっと辛いかな。この辺が、このProjeKctシリーズの
音世界の面白いところだと思います。
 
是非、再チャレンジしてみて下さい。
 

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80793/54527204

この記事へのトラックバック一覧です: ロックで即興演奏はあるのか:

« 名演を引き出した「若き才能」 | トップページ | ビッグバンド・ジャズは楽し・24 »

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ