まるで「喧嘩」の様な即興演奏
今を去ること40年ほど前になる。高校一年生の時、映研の先輩に触発されて、ロックのアルバムを聴き始め、どっぷりと浸かっていくわけだが、その頃、エリック・クラプトンは、麻薬禍からカムバックして、『461 Ocean Boulevard』というアルバムをヒットさせていた。
エリック・クラプトンと言えば、日本でいう「ロック三大ギタリスト」の一人。1960年代から、英国ロックシーンの中で「ギターの神」と呼ばれ、伝説のバンド、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク・アンド・ドミノスを結成しては解散する。
その伝説のバンド「クリーム」であるが、ベーシスト兼ボーカリストのJack Bruceとギタリスト兼ボーカリストのEric Clapton、ドラマーのGinger Bakerの三人がメンバー。この三人の即興演奏が目玉のバンドで、バンドの最後の時期、三人の仲が最悪になった頃の演奏は、お互いの音に全く耳を傾けず、自分の出したい音をガンガン叩き付けて、まるで「喧嘩」の様なセッションだったという。
しかし、クラプトンが好きになって、クラプトンからクリームのアルバムへと入っていったが、クリームのスタジオ録音のアルバムは、思ったほど過激な演奏でなく、結構ポップなブルース・ロックという感じで、なんか肩すかしを食らった感じでガッカリしたことを覚えている。
『Wheels of Fire』、邦題『クリームの素晴らしき世界』のライブ録音部分は、その即興演奏の凄さの一端を垣間見ることが出来るが、過激というほどのものでは無い。ただ、ロックというフォーマットでの即興演奏という面では、さすがに素晴らしいテクニックとフレーズに裏打ちされた、当時としては最高峰に位置する演奏だと思う。
そんなこんなで、クラプトンのクリームは、ロック雑誌などで書かれているような「過激な即興演奏」は無いな、ということで、それ以来、注目すること無く、その存在をほどんど思い出すことは無かった。
が、この10年ほど前から、iTunes Music Storeを始めとするダウンロード・サイトがスタートして、このダウンロード・サイトでは、アルバムに収録された曲の一部を試聴することが出来る。これが実に助かる。そのアルバムに収録されている音の一端が判るので、そのアルバムの内容を吟味・判断するのに随分役に立った。
そんな試聴で「これは」と思って、聴き直そうと思ったクリームのライブ盤がこれだ。1972年にリリースされた、Cream『Live Cream Volume 2』(写真左)。 クリームの解散後にリリースされた未発表音源集である。
1972年のリリースなので、僕が高校生の時には、レコード屋に確かにあった。でも、この「クリームの解散後にリリースされた未発表音源集」だということで、なんだか残り物の様な感じがして胡散臭かったこと、そして、このチープなジャケット・デザインがあまりに安っぽすぎて、当時の小遣いからすると大枚だった「二千三百円」を叩いて購入する気にはならなかった。
しかし、この『Live Cream Volume 2』に収録されている音は凄い。高校時代、読みあさったロック雑誌にあった、「お互いの音に全く耳を傾けず、自分の出したい音をガンガン叩き付けて、まるで「喧嘩」の様なセッション」な音が、このライブ盤に詰まっている。
このライブ盤に収録された演奏は、1968年2月から6月にかけて行われた3回目の全米ツアーと同年10月のグループ最後の全米ツアーより6曲を収録とあり、ちょうど、クリームのバンドの最後の時期、三人の仲が最悪になった頃のライブ演奏になる。なるほど「まるで「喧嘩」の様なセッション」である。これが伝説の「即興演奏の凄さ」なんですね。
選曲も、今の目で振り返ると、ほとんどクリームのベスト盤の様な、クリームの代表曲をズラリと並べているではないか。テーマの部分は、キャッチャーでポップな展開が心地良いが、インプロビゼーションに入ると、お互いの音に全く耳を傾けず、自分の出したい音をガンガン叩き付ける「喧嘩」セッションが延々と展開。凄いテンションとテクニックである。
このライブ盤を初めて聴いたのが5年前。高校時代に初めてクリームを聴いて以来、30年を経過して、やっとクリームの、お互いの音に全く耳を傾けず、自分の出したい音をガンガン叩き付ける「喧嘩」セッション、を体感したことになる。長年、ロックを聴いていると、1970年代には感じることが出来無かった、新しい音の発見があったりして、全く飽きることが無い。
大震災から2年9ヶ月。決して忘れない。まだ2年9ヶ月。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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