先入観無しに聴いて欲しいなあ
これだけ冬らしくなると、もう絶好の純ジャズの鑑賞の季節である。今日は、久し振りにこんなデュオを聴いた。
ピアノだけを聴くと、スイング感は希薄で、それでいて流麗な、流れる様なピアノのフレーズ。しかし、タッチは硬質でクラシックのタッチでは決して無い。あくまで、ジャズ畑のピアニストのタッチ。でも、オフ・ビートの粘りが希薄で、恐らく、白人のジャズ・ピアニストということまでは類推できる。
そこで、デュオの相方のホーンが出てくる。音を聴けば直ぐにアルト・サックスと判る。そして、その円やかな優しい、流れる様な唄う様なフレーズは独特の唯一無二の個性。これは直ぐに判る。ポール・デスモンドである。
でも、このポール・デスモンドのアルト・サックスと、先に出てきたピアノをデュオとして合わせると、その流麗な美しい響きのピアノの主が判る。そのピアノの主とは、デイブ・ブルーベックである。そうと判って聴き直せば、確かに、デイブ・ブルーベックではある。
でも、デイブ・ブルーベックにしては、流れる様な、美しいフレーズが意外と言えば意外。デイブ・ブルーベックのピアノと言えば、スイングしない、ゴツゴツ、バキバキした、スクエアなビート感で、ジャズ・ピアニストとしては、あまり評判が宜しくない。あのマイルス・デイヴィスをして「あんなスイングしないピアニストはいない」と、けちょんけちょんである。
ブルーベックは、特に、バックにベースとドラムを侍らせて、リズム&ビートを明確にした瞬間から、スイングしない、ゴツゴツ、バキバキした、スクエアなビート感のピアノになる。
それでも、そのスイングしない、ゴツゴツ、バキバキした、スクエアなビート感のピアノが、円やかな優しい、流れる様な唄う様なフレーズのポール・デスモンドのアルトにピッタリと合うのだから、ジャズとは不思議なものである(笑)。
ブルーベックのピアノはソロになると、流麗な美しい響きのピアノに早変わりする。タッチは硬質ではあるが適度なもので、心地良い硬さ。ビート感、スイング感が希薄なので、クラシック系のピアノ・ソロの様な、リリカルな雰囲気が強調される。
そこにポール・デスモンドのアルトである。このデュオ盤、良いに決まっている。そのデュオ盤とは、Dave Brubeck and Paul Desmond『1975: The Duets』(写真左)。1975年の3カ所での録音からのチョイス。
冒頭の「Alice in Wonderland」から、ブルーベックのピアノはロマンチックで、デスモンドのアルトは、囁きかけるかのように円やかで優しい。やっぱり、この二人、相性抜群なんですね。感心することしきり、です。
以降、リリカルで美しいデュオは聴き応え十分。しかし、あの変則拍子のスクエアなスイング感満載の「テイク・ファイブ」で一世を風靡したブルーベックとデスモンドのデュオとは、にわかには思えない、ロマンティックで流麗なデュオが続きます。
ブルーベックとデスモンドって、日本ではあまり人気が無いんで、意外と日本では知られていないブルーベックとデスモンドのデュオですが、これは聴きものです。
スイングしないピアニストのブルーベックとか、甘すぎる砂糖菓子の様なアルトのデスモンドとか、そんな喧伝に惑わされずに、先入観無しに聴いて欲しい、デュオ盤の佳作です。
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