シンセ・プログレの傑作ライブ
ジャーマン・プログレッシブ・ロックの雄、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)。シンセ・ミュージックの老舗であり、シンセを活用したメロディアスなフレーズとシーケンサーを活用したリズム&ビートを展開。拡がりのある幽玄なメロディーとリズミックなビートを基本とした、シンセ・ミュージック中心の音世界が、タンジェリン・ドリームの個性である。
このタンジェリン・ドリームの音世界はライブでも再現される。シンセとシーケンサーを活用した演奏なので、スタジオ録音の音をライブで再現することは難しいと思っていた。時代は1970年代中盤から後半。機材だって録音技術だって、まだまだ発展途上の時代である。
そこで、大学に入って紹介されたタンジェリン・ドリームのアルバムが、Verginレーベル移籍第3作目の『Ricochet(リコシェ)』(写真左)。ジャケット・デザインが実に印象的で、まず、このジャケット・デザインだけで、このアルバムに詰まった音の素晴らしさが想像出来る。思わず、即試聴である。
出だしのLPのA面全面を占める「Ricochet Part One」は、今までの幽玄な音世界に、リズミックなビートが加わって、かなり勇壮な感じが実に良い。ゆったりとした序盤からヒートアップしていく展開はまさに「ドラマチック」。どうも、シンセサイザー・ドラムでは無い、リアルなドラムを導入した様で、このチャレンジが効果的で、演奏全編に渡り、キレのある、ドラマチックな展開を実現しています。
これ凄いなあ、と思って聴いていたら、このアルバムはライブ盤だと聴いてビックリ。この音ってライブの音か、と耳を疑いました。本当にライブ盤、と言いながら、LPの録音に関するコメントを読んだら、確かにライブ盤のようだ(コメントは独語だったが、僕は大学時代、独語が第二外国語だったのでなんとか読めた)。これがライブの音なのか。僕はタンジェリン・ドリームを再評価。
LPのB面を占める「Ricochet Part Two」は、絶望的な雰囲気のピアノ・ソロから徐々に展開し、読経の大合唱で一旦覚め、印象的なリズムパターンを重ねていく展開。この「プログレッシブ・ロックとはかくあるべし」という展開には惚れ惚れする。
演奏全体にしっかりとメリハリが付いていて、決して単調にならず、バランスが良い、見事なまとまりを持ったライブ盤です。シンセとシーケンサーを活用した演奏なので、スタジオ録音よりも内容的に荒っぽい内容になってしまいがちなのですが、このライブ盤についてはまったくそんな印象はありません。素晴らしいライブ盤です。
この『Ricochet(リコシェ)』は、タンジェリン・ドリームの中でも、突出してヘビロテ盤の一枚で、今でも時々、聴きたくなっては、CD棚から引きずり出します。Verginレーベル移籍後の『Phaedra(フェードラ)』『Rubycon(ルビコン)』と併せて、Verginレーベル初期三部作と勝手に名付けて、未だに愛聴しています。
大震災から2年7ヶ月。決して忘れない。まだ2年7ヶ月。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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